SR-71 ブラックバード(Lockheed SR-71 Blackbird)

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2010/01/04(月)
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SR-71は1950年代後半から1960年代にかけてアメリカのロッキード社・スカンクワークスで開発した超音速・高高度偵察機。愛称はブラックバード。初飛行は1964年12月11日。1967年5 月31日実戦投入。沖縄・嘉手納飛行場にも配備されたことがあり、その異様な形状と夜間に出撃することから現地では「ハブ」と呼ばれていた。

概要

SR-71は1950年代に開発された偵察機A-12を改良したもの。U-2偵察機の後継として設計・開発された。高高度での亜音速巡航中に地対空ミサイルを被弾したU-2撃墜事件を受けて、高高度でM3級の超音速飛行を行うことでミサイル迎撃を回避することと目標とした。タンデム複座の前席にパイロット、後席にRSO(偵察機器を操作する乗員)が搭乗し、高空からの写真偵察を行う。SR-71は超高速飛行に特化した従来にない特異な外見と内部構成により高高度での超音速巡航飛行を実現したが、飛行に際しては高度な技術と膨大な費用を要するため偵察衛星技術の向上により1989年の退役決定後、全機が退役した。

その後湾岸戦争において迅速な情報収集には偵察衛星だけでは足りなかったことや北朝鮮による核査察拒否問題が起こったことなどからSR-71復活配備計画が持ち上がり、1995年には3機のSR-71を復活配備するための予算が計上され、1996年に新SR-71部隊を編成し1997年には即応体制完了を発表した。しかし1998年に当時のビル・クリントン大統領によって拒否権が発動され、復活配備されたSR-71は計画通りの3機が揃うことも (配備が完了したのは2機) 実際に運用されることもないまま再度退役している。同じく1998年にNASAで試験機として運用されていたSR-71も退役している。ただし引退といっても一部の機体はモスボール状態で保管して再配備の可能性を残している。

この機体の名称は当初RS-71だった。RSはReconnaissance Strike:偵察爆撃を意味する。しかし結局、偵察爆撃機としてではなく純偵察機として用いることになったため、Strategic Reconnaissance:戦略偵察を意味するSRを冠し、SR-71に変更している。ちなみに「71」の数字は、B-70の爆撃機仕様を変更して偵察爆撃機とする計画に付与したRS-70の連番となっている。

なお、RS-71とSR-71は型番のアルファベットが逆になっている。これについて1964年に同機の存在を公表する場でリンドン・B・ジョンソン大統領がSR-71と誤って発表したため急遽名称をSR-71に変更したのが真相であり、RS-71に関連する全書類をSR-71に修正する4ヶ月間の費用は17万ドルを要し、SRを戦略偵察機の略というのは後付けの定義だとする説がある。これに対して、ジョンソン大統領のスピーチにミスはなく設計段階の初期(つまり大統領の発表前)に偵察爆撃機という種別自体が放棄され設計自体戦略偵察機として設計されていたとする異説もある。ただし、いずれの説も明確な根拠は示されておらず都市伝説の域を出るにいたってはいない。更に当時の米空軍参謀長カーチス・ルメイ(対日無差別爆撃の提唱者)がSR-71の音韻の方を好んだことから大統領のスピーチ文章を意図的に変えたという話さえもあるが、その信憑性はいささか疑わしいという見方もある。

性能と設計

SR-71は、1976年7月28日、第9戦略偵察連隊機により3,529.56km/h(実用高度25,929m)という実用ジェット機としての最高速度記録を出している。これだけの速度域では空気との摩擦や空気自体の圧縮によって生じる空力加熱により機体表面温度は摂氏300度を超えて部分によっては摂氏700度近くに達する。こうした高熱に対する対策のために、いくつかの特異な機軸が盛り込まれている。

高熱対策

SR-71の機体は、全体の85%にチタンが使用されている。これは、通常航空機で使用されているアルミニウム合金では上記の温度で強度が低下してしまうからである。当時はチタン加工については未成熟な段階だったため手探り状態での開発であり当初は部品の歩留まりは10%程度だったとも言われている。

SR-71以前の航空機では排気口のフェアリング、補強や冷却のためのパーツ、高温部分の成型品などごく一部の使用に留まっており、以降は繊維強化プラスチックなど複合材料や新素材の使用が増加したため、チタンの使用率はSR-71が群を抜いたものとなっている。さらに、高温下での熱膨張を考慮し、機体外装パネルにわずかな隙間を意図的に開ける設計としている。

そのため、地上で機体温度が常温にある間は、パネルの隙間から燃料が染み出すため、床には受け皿が置かれた。復活配備の際には技術者はこの燃料漏れ対策に苦心したととも言われる。こうした高熱対策は機体構造だけでなく、タイヤにも必要で、耐熱性を持たせるためアルミニウム粉を使用した特殊なタイヤが使用されている。

SR-71の燃料も、こうした高温対策の一環として、通常のジェット燃料に比べて高い60℃という引火点を持つJP-7を使用する。そのため、始動時およびアフターバーナー点火時にはトリエチルボラン (TEB/Et3B) 数十ccの噴射を行う。また、燃料はエンジンにて燃焼させる前にまず機体を冷却させるために循環し、その後熱交換により高温になった燃料ははじめてエンジンに送り込まれる。マッハ3.2の飛行中はターボジェットエンジン本体が発生する推力は全体の10%に過ぎず、推力の大半はエアインテークダクトで発生している。ジェットエンジンにおいてエアインテークで推力が発生することはSR-71に限らないが、その割合が非常に高いことが特徴である。

高速性と操縦性

エンジン内空気流制御装置を制御するハネウェル・コンピューター・システムは定期的に最新のものに更新されており、特に1980年代後半のデジタル化による飛行状況のコンピューター制御機構との統合により、効率的で安全な飛行を実施できるようになったという(手動飛行時にも機体の揺れを補正するために 8チャンネルの自動安定装置を働かせる)。就役当時のアナログ制御では、スパイクコーンの制御の失敗による大きな衝撃の発生のために飛行が不安定になるだけでなく、フレームアウトを併発することもあった。フレームアウト後の再始動は可能であるものの、左右のエンジン間隔の広い本機では始動を終えて出力が安定するまで大きな当て舵を必要とした。

SR-71が高速を発揮できるのは、大気密度が低い高高度領域の話で、高度1万メートル以下では多くの戦闘機に及ばない。機体強度も弱く、バンク角度は45度が限界で(運用の性格上、その必要性もないが)背面飛行はできない。また飛行特性は神経質であり、乗員は特別な訓練を必要とした。危険な任務に従事してきたにもかかわらず1機も撃墜されたことがないが、上記のフレームアウトや操縦の困難さにより、着陸の失敗といった事故で多くの機体が失われている。

ステルス性

SR-71はステルス性を高めるさまざまな試みがされている。放熱効果を高めるために採用された機体全体を覆う表面の黒い塗料には (フェライト系と言われる) 鉄粉が混ぜられ、機体表面は鋸状にされ、ブレンデッドウィングボディとダブルデルタを併用したのっぺりとした外見にもレーダー電波を乱反射させる効果がある。機首にはチャインと呼ばれる張り出しを設けて尾翼は内側に傾斜させている。

さらにはエンジン噴射煙のレーダー反射を抑えるために燃料にはセシウム化合物を含んだ添加剤A-50を配合している。当時としては画期的なステルス性能を持っておりしばしば沖縄から離陸したSR-71が那覇空港のレーダーシステムから一時的に消失することも確認されているがステルス性のために撃墜困難という訳ではない。旧ソビエト領空を飛行中にも地上の地対空ミサイル施設から頻繁にレーダーロックされ実際に何度も対空ミサイルの迎撃を受けている。一方パイロットによる電柱のようなミサイルが飛んでくるのが見えたというレポートもあり、SR-71登場後ミサイルの性能も大きく向上していることもあり撃墜不可能というわけではない。以後、これらのステルス技術は、スカンクワークスによってF-117 (航空機)へと引き継がれる。

作戦任務における運用

通常離陸の24時間前より準備が始められる。使用されるオイルは高い耐熱性を要求されるため、常温では固体である。そのため、エンジン始動には整備員による周到な準備を必要とし、乗員だけではエンジンを始動できない。

高空を飛行するため、乗員はNASAの宇宙服に似た高度与圧服を着用するが、このスーツの着用には他人の介助が必要である。与圧服で急減圧が起こった際、体外の空気の減圧により気泡が生じて、血液の流れが阻害される症状である血管の空気塞栓の予防のために、着用時は搭乗前に充分な時間を掛けて100%純酸素を呼吸して血液中の窒素を追い出さなければならない。

高温対策のために常温のSR-71の機体からは燃料が漏出するので、安全の為に燃料を満載せずに離陸する。離陸後高度3000メートル付近で専用の給油機とランデブーする。給油終了後、アフターバーナーに点火して高度1万メートル付近に急上昇し、ここで重力を利用した降下によってマッハ1を超えた後に偵察飛行の任務につく。任務上、アクティブレーダーは使用せず、天測航法(昼間でも上空20000mでは星を観測できる)を併用した全自動慣性航法を使用する。また作戦中はトランスポンダーを停止して味方のレーダーシステムからも姿を消すようにしている。偵察任務で常用するマッハ3(秒速1km)の速度域での最小旋回半径は100キロ以上にも達するので、目標上空の再航過は実用上は不可能である。

帰投して基地に着陸する前に基地の周囲を低速で旋回することが多いが、これは着陸後の機体整備を容易にするために機体を冷却するための措置である。着地スピードは高く、接地後にドラグシュートを使用して減速する。

要目 (SR-71A)

* 全長:32.73m
* 全幅:16.94m
* 全高:5.63m
* 最高速度:3,529.56km/h - 1976年7月28日。実用機における世界速度記録。ちなみにコクピット窓ガラスの強度による限界だが超音速機ではエンジンのパワーの限界ではなく機体が耐えられる限度が最高速度というのは特に珍しいことではない。
* 巡航速度:M3.2+(フルアフターバーナー)
* 巡航高度:25000m+
* エンジン:P&W社製 J-58(JT11D-20B)×2基
* 推力:10,433kg(M3.2巡航アフターバーナー使用時14,742kg+)×2
* 空虚重量:29,484kg
* 最大離陸重量:52,250kg
* 推定総重量 : 63.5t+
* 乗員:2名
* 武装:なし

さらに詳しく → SR-71 ブラックバード  偵察機



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