ユーロファイター タイフーン (Eurofighter Typhoon)

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2010/01/02(土)
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ユーロファイター タイフーン(Eurofighter Typhoon)は、NATO加盟国のうちイギリス、イタリア、スペイン、ドイツ(計画開始当時西ドイツ)の四カ国が共同開発した戦闘機で、デルタ翼とコクピット前方にカナード(先尾翼)を備え、カナードデルタ(canard-delta)と呼ばれる形式の機体構成をもつマルチロール機

開発経緯

背景

1970年代、アメリカ合衆国やヨーロッパの各国空軍はソビエト連邦の新型戦闘機の登場に直面し、自国の戦闘機が陳腐化し始めたという認識が生まれた。1977年までにフランスはSEPECAT ジャギュアの代替、西ドイツはロッキード F-104 スターファイターの代替、イギリスはジャギュアとホーカー・シドレー ハリアーの代替を検討していた。

イギリス空軍はジャギュアやハリアーより多くの搭載量を持ち、低コストで対空戦闘能力に秀でていて、かつ、ハリアーのように短距離で離陸が可能な戦闘機を望み、AST (Air Staff Target) 396を発行した。しかし、あまりに多くの性能を1つの航空機に要求しすぎていると分析されたため、計画は見直された。1972年に対空戦闘能力に絞った戦闘機として仕様書AST 403を発行し、ブリティッシュ・エアロスペースでP.106Bが設計された。ドイツのメッサーシュミット・ベルコウ・ブロームはドイツ空軍から出されたTKF-90 (Taktisches Kampfflugzeur 1990) の条件に合う制空戦闘機の開発を行っていた。

それぞれ独自に開発していたが、1979年にイギリスと西ドイツの間で共同開発の協定が結ばれた。引き続きイギリス側はブリティッシュ・エアロスペース、ドイツ側はメッサーシュミット・ベルコウ・ブロームが設計を担当した。この計画は当初ECF (European Collaborative Fighter)と名付けられ、後にECA (European Combat Aircraft) とプログラム名は変更された。両国とも冷戦の軍事支出による予算の制約があったことから、他国の参加が求められ、フランスとの協議によりダッソーを基幹に参加が決まった。

フランスは開発費用の拠出に消極的であったことが1980年の政府間協議において問題化した。西ドイツのTKF-90やイギリスのP.106Bは1981年までに開発が中止された。ブリティッシュ・エアロスペースは独自に輸出向けとしてP.106Bを基にP.110を設計したが、顧客は現れなかった。しかし、TKF-90とP.110のコンセプトを取り入れたパナヴィア トーネードのモックアップが1982年にファーンボロー国際航空ショーにおいて公開された。その後、フランスが後のダッソー ラファールとなるACX (Avion de Combat Experimenatal)の開発を開始ししたため、イギリスはEAP (Experimental Aircraft Program) の開発を開始し、EAPの開発費援助を受けるため1983年5月にイタリアのアエリタリアと契約した。

共同開発計画

1983年にイギリス、フランス、ドイツ、イタリアに加えてスペインの5か国でEAPを基にした設計に合意がなされ、詳細の協議が始まった。しかし、イギリスとスペインがマルチロール機を希望していたのに対し、西ドイツとイタリアは制空戦闘機を希望していた。1985年12月にその意見の相違は妥協を見出し、仕様に関する合意を成立させた。この合意において、生産は1992年開始を目指した。計画はEFA (European Fighter Aircraft) として1987年9月に正式な仕様が発行された。フランスは艦上機としての能力を備えることとパワープラントに自国産のSNECMA M88を採用することを最後まで妥協せず、1985年7月に共同開発計画から脱退した。

1986年に計画を管理するユーロファイター社とパワープラントのEJ200の開発を管理するユーロジェット・ターボ社が設立され、EAPの成果を認めたユーロファイター社は1987年以降の試験に資金を提供する事を決定した。運用開始時期は当初計画の1990年代前半から1997年に延びたものの開発はこのまま順調に進むと思われた。

東西統一で、旧東ドイツ地域のインフラ整備に多額の資金が必要となった事により、1992年にドイツが開発コスト問題から計画の脱退を示唆、この動きに対し、複数の代替案が検討されたが、代替案のすべてが今まで以上のコストがかかるか、仮想敵機であるMiG-29やSu-27に能力面で劣るものばかりであった。同年年末に開発参加国の国防相会議が開催され従来の計画を維持することを確認した。

方針維持の要因として、これまでに投入された資金が無駄になる事や外国製戦闘機の導入を行っても大幅なコストの削減ができない、参加国の航空機産業からの圧力等があった。計画の推進が確認された後に、政治的な理由から想定運用開始時期を遅らせ2000年からの運用としたため、機体名称の変更が行われEFAからEF (Eurofighter) -2000に変更され、1998年には輸出市場向け名称としてタイフーン (Typhoon)と名付けられた、現在ではタイフーンが愛称となっている。

イタリアとドイツの単座型と複座型は機体毎のナンバ-で識別している。2002年夏から量産開始。価格3,800万USドル(2006年上半期現在)。アフターバーナーなしで超音速飛行を可能としており、機体構成等が他の4.5世代型のヨーロッパ製戦闘機と共通する点が多い。

生産

開発国向けの量産機数合計620機は3段階に分けて生産され、各段階に向けたスパイラル方式での近代化が行なわれる。それぞれの段階はトランシェ (Tranche)と呼ばれ、1から3までの各トランシェ内でもその初期型から後期型までの仕様の違いに応じてブロック数で表される。トランシェは発注段階の区分であり、仕様の違いではない。

従ってトランシェ数のみによって機体の能力を決め付けるのは必ずしも妥当ではない。また、ブロックについても改修をすることにより、その後のブロックと同等の能力を得ることが可能で、例としてイギリス空軍が取得したトランシェ1 ブロック2/2Bは、その後の改修により、ブロック5と同様の能力を付与され攻撃、偵察も可能な多目的機となっている。

2009年10月現在、以下のブロックが生産されている。

* トランシェ1:ブロック1、ブロック2、ブロック2B、ブロック5、ブロック5A
* トランシェ2:ブロック8、ブロック8A ブロック8B ブロック10、ブロック15 ブロック20

また、2009年7月31日には共同開発四カ国でトランシェ3の生産が締結されたとされる。

* トランシェ3A

特徴

レーダー

トランシェ1・2が搭載するレーダーのCAPTOR(キャプター)は、ユーロレーダー社製の多モードパルスドップラーレーダー(メカニカルスキャン方式)。アンテナ直径約70cm。チャンネル数:3チャンネル。戦闘機レベルの大きさの目標については約160km、大型目標では約320kmの探知能力があり、同時に20個の目標の追跡が出来るという。

トランシェ3では、フロントエンドを改良したAESA方式のキャプターEが搭載される予定であるが、導入国間に意見の相違がある為、当初計画の約45%に当るトランシェ3Aにおける搭載は見送られる見通し。キャプターEは2007年5月より飛行試験を開始しており、探索距離等、巡航ミサイルのような小型目標やステルス性のある目標を探知する能力に資する性能向上を目指すといわれる。なお、CAPTORは旧称をECR90、キャプターEは別名をCAESAR(カエサル、シーザー)と言い、2015年に実用化される予定。

DASS

防御支援サブシステム(DASS; Defensive Aids Subsystem)は以下の各機器により構成される。

* DAC  防御支援コンピューター
* RWR  レーダー警戒受信機
* ESM  電子戦支援装置
* LWR  レーザー警戒受信機
* MAW  ミサイル接近警戒器
* チャフフレアディスペンサー
* ジャミング発生装置
* 曳航式デコイ

各種システムを統合化する防御支援コンピュータ(DAC)は、機体の全周をカバーする各センサーにより探知した脅威の内容を判断し、自動的に最も適切な方法で対処するようになっている。

タイフーンの自己防御システムはキャノピー下の両側と主翼後縁付け根のレーザー警戒装置と主翼前縁付け根と垂直安定板内のミサイル接近警報装置と主翼両端の筒の中にECM装置とESM装置を備え、イギリス向けの機体は右側筒の標準のECM装置を外して曵航式デコイ2基を内蔵するECM装置に変更している。

PIRATE

PIRATE(IRST)は探知走査中にも追跡機能を持ち、空中と地表上の両目標への対処能力を有し、航法用に前方監視赤外線画像を利用できるとされる。

MIDSデータ・リンク端末

ユーロファイター タイフーンは、MIDS(多機能情報伝達システム)の端末を搭載しており、北大西洋条約機構の新しい標準的戦術データ・リンクであるリンク 16(TADIL J)のネットワークに参加することができる。リンク 16は、海軍用のリンク 11と空軍用のリンク 4を統合する新しい規格であり、航空自衛隊やアメリカ軍の作戦機、早期警戒管制機、地上レーダーサイトに加えて、イージス艦・航空母艦やパトリオットミサイル部隊など他軍種の部隊との情報共有をも実現するもので、その情報を元に、効率的な統合作戦行動を可能とするデータリンク情報はコックピット内にある3基のMHDD(多機能ヘッドダウンディスプレイ)に表示される。一部のメディアではタイフーンが欧州製である為、アメリカ軍との共同作戦が難しいなどといった根拠のない報道があるが、明らかに間違いで、アメリカ軍との連携に問題は無い。

VTAS

HOTAS概念が導入された、各種スイッチ類が付いたスロットルレバーと操縦桿、DVIと呼ばれる直接音声入力装置によって構成され、パイロットの作業効率を上げる為の装置。

DVIは音声で以下のシステムの操作を行える。

* 各種データ入力、
* 多機能ヘッドダウンディスプレイのモード切替
* 無線や航法装置の周波数切り替え
* 目標選択
* 僚機への目標割り当て

飛行操縦システム関連

ケアフリーハンドリング機能 パイロットがどのような操作を行っても飛行状態が異常な状態にならないように自動的に操縦システムが制御するもので 失速、オーバーG、スピン、デバーチャーなどを防ぐ効果がある。

その他

ヘッドマウントディスプレイを備えており、ヘルメットに連動して視線移動でロックオンできる。 また、搭載するPIRATE(受動式赤外線探知装置)はIRST(赤外線捜索追跡システム)とFLIR(赤外線前方監視装置)の機能を合わせ持つ。タイフーンの自己防御システムはキャノピー下の両側と主翼後縁付け根のレーザー警戒装置と主翼前縁付け根と垂直安定板内のミサイル接近警報装置と主翼両端の筒の中にECM装置とESM装置を備え、イギリス向けの機体は右側筒の標準のECM装置を外して曵航式デコイ2基を内蔵する ECM装置に変更している。チャフ・フレア・ディスサスペンサーも備えており、全てをDAC(防御支援コンピューター)が統合・制御しこれらをまとめてDASS(防御支援サブシステム)と言う。

機体

クロースカップルド・デルタ翼はデジタル・コンピュータに常時制御されていて、操縦者の命令に従い安全な飛行姿勢が維持できる範囲内で最適化され、超音速飛行時だけでなく低速時でも安定性が確保される。耐Gスーツと加圧呼吸装置で長時間9Gに耐えられる。急激な速度変化や旋回が可能となった。人体と機体が耐えられる限界が9G。なお、従来機は数秒しか耐えられない。F-22同様アフターバーナーを使用しなくても超音速飛行が可能なスーパークルーズ性能を備えるため、低速な赤外線ミサイルの追尾はあまり脅威とならない。空虚重量でマッハ 1.5、全備重量でマッハ1.3を発揮できる。

前方からのRCS低減のみに配慮されたと言われる機体は電波吸収材の多用により、トーネードに比べレーダー反射面積(RCS)が4分の1以下に減少。BAESの評価では正面からのRCS の値は最新型F/A-18E/Fやラファールよりも小さく、正面RCS面積はステルス戦闘機に次ぐという評価もある。最近の報道では機体のRCSは一般的な中小型戦闘機の20%、もしくはそれを下回る数値である1㎡以下だと推定されている。イギリス防衛評価研究所(DERA)の試算をもとに、改良型Su-27(Su-35相当)と撃墜/被撃墜を比較するとタイフーンは3から4.5対1の割合で有利である。

マルチロール機

BAEシステムズ社のマーケティング資料では、本機がアメリカ製の最新戦闘機F-22 ラプターには空戦能力の点では劣ると認めた上で、F-22とF-35 ライトニング IIの両機それぞれの得意分野である空中戦闘能力と対地攻撃能力の両方を1機種でカバーできる、フォース・ミックスの観点でも優れた戦闘機として各国軍への宣伝を行なっている。

低翼機ではあっても、空気取込口が胴体下にあることもあって主翼下のグランドクリアランスが広く、また、翼端を除いて13ものハードポイントがあり、7.5トンの兵装搭載容量を持つため、攻撃機としての能力が高い。トランシェ1ブロック5からはPIRATE(受動式赤外線探知装置)を装備し、胴体下にイスラエルのラファエル社製、ライトニングIIIターゲティングポッドを搭載できる。中小型の機体に出力の大きなエンジンを備え、高速での格闘戦闘でも有利な性能を備える。

対地攻撃

トランシェ1ブロック5よりレーザー誘導爆弾の運用能力が付加され、トランシェ2ブロック15から巡航ミサイルや対装甲ミサイル、超音速における使用が可能な各種爆弾の運用を可能にする計画だとされる。

対艦攻撃

タイフーン トランシェ2以降においてはハープーンなどの対艦ミサイルを最大4発搭載して艦船への攻撃能力を有する。その場合、対艦ミサイルの他に3つの外部燃料タンクと6発の空対空ミサイルを同時に積載できる。そのため、遠距離の海上脅威に対する任務遂行中に航空脅威に遭遇しても十分対応できる能力を備える。

仕様・性能

諸元

* 乗員: 1名または2名
* 定員: 2名
* 全長: 14.9m (48.9ft)
* 全高: 5.3m (17.4ft)
* 翼幅: 11.0m(36.1ft)
* 翼面積: 50m2 (538ft2)
* 翼型: カナードデルタ
* 空虚重量: 10,995kg (24,240lb)
* 最大離陸重量: 23,500kg (51,809lb)
* 動力: ユーロジェット・ターボ EJ200 ターボファンエンジン × 2
    o ドライ推力: 60kN×2 (6,188kg×2) × 2
    o アフターバーナー使用時推力: 89kN (9,075kgf) × 2

性能

* 最大速度:
    o 13,700mで水平飛行・アフターバーナー使用時:マッハ2.0(2,120 km/h)
    o 高高度水平飛行・アフターバーナー不使用時:マッハ1.1-1.5
    o 海面高度で水平飛行・アフターバーナー使用:マッハ1.2
* フェリー飛行時航続距離: 3,706km
* 航続距離: 2,900km
* 実用上昇限度: 19,800m (64,961ft)
* 上昇率: 315 m/s (1,033ft/s)
* 最大推力重量比: 1.13(空対空仕様時)
* ブレーキオフから離昇までの所要時間:8秒以内
* ブレーキオフから35,000ft(10,675m)、マッハ1.5までの到達時間:2.5分以内
* 200ノットからマッハ1までの所要時間:30秒
* Gリミット:+9G、-3G
* 固定武装:マウザーBK-27 27mmリヴォルヴァーカノン 1門
* 爆弾
    o GBU-31 JDAM 誘導爆弾
    o ペイブウェイ Ⅱ/Ⅲ/IV 500ポンド-2,000ポンド 誘導爆弾
* 空対空ミサイル
    o IRIS-T
    o MBDA ミーティア
    o AIM-9 サイドワインダー
    o AIM-120 AMRAAM
    o AIM-132 ASRAAM
* 空対地ミサイル
    o MBDA ブリムストーン(対戦車ミサイル)
    o SCALP-EG/ストーム・シャドウ(巡航ミサイル)
    o タウラス(巡航ミサイル)
* 空対艦ミサイル
    o AGM-84 ハープーン
    o KDA ペンギン
* 対レーダーミサイル
    o ALARM
    o AGM-88 HARM

さらに詳しく → ユーロファイター タイフーン  マルチロール機  耐Gスーツ  ヘッドアップディスプレイ
外部リンク → ユーロファイター社公式HP



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