MIM-104 パトリオット(MIM-104 Patriot)

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2009/12/20(日)
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MIM-104 パトリオット(MIM-104 Patriot)は、米レイセオン社がMIM-14 ナイキ・ハーキュリーズの後継としてアメリカ陸軍向けに開発した広域防空用の地対空ミサイルシステム。ミサイル防衛では終末航程に対応し20~35kmの範囲を防御する。湾岸戦争時にイラク軍が発射したスカッドミサイルを撃墜したことにより有名になった。米国のほか日本を含む同盟国など世界10カ国以上で運用されている。

パトリオット・ミサイルは厳密にはミサイルそのものを指すが、ミサイル発射システムを含めてパトリオット・ミサイルと呼ぶ場合もあるため、本項では発射システムを含めて解説する。

MIM-104」はミサイルに対する形式名称、「Patriot」はその愛称で、「Phased Array Tracking Radar Intercept On Target」(直訳:目標物を迎撃する追跡位相配列レーダー)の頭文字をとったものといわれている。Patriot は英語で「愛国者」を意味し、原語での発音は「ペイトリアット」に近い。日本では報道など一般的には「パトリオット」、自衛隊など政府公式資料では「ペトリオット」と表記されている。

発射システム概要

パトリオット・ミサイル発射システムはトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はパトリオット発射中隊によって運用される射撃管制車輌、レーダー車輌、アンテナ車輌、情報調整車輌、無線中継車輌、複数のミサイル発射機トレーラー、電源車輌、再装填装置付運搬車輌、整備車輌という10台以上の車両により構成される。これらの車両が自走して野外サイトに設定後、射撃体勢が整う。

ナイキの発射システムよりも省力化が図られている。交戦中に人員が配置されるのは射撃管制車だけでレーダーや発射機は無人となり、射撃管制車からの遠隔操作によって制御される。

発射システム詳細

システムは複数の機材から構成されており、有線・無線によるインターフェイスにより連動している。

レーダー装置

レーダー装置(Radar Set、RS)の形式名称はAN/MPQ-53(Config.2形態以前)又はAN/MPQ-65(Config.3形態以降)。RSはC-Band帯の電波を用いる、フェーズドアレイ・多機能レーダーである。目標の捜索・追尾の他、IFF、ミサイル誘導なども行う。1高射隊(FU:Fire Unit)当たり1台のRSが配備される。運用中は無人となる。

射撃管制装置

射撃管制装置(Engagement Control Station、ECS)の形式名称はAN/MSQ-104(Config.2形態以前)又はAN/MSQ-132(Config.3形態以降)。1射撃中隊に1台が配備され、 RSからの情報を処理し要撃命令を下す。米軍のECSシェルターはM927 5tカーゴトラックまたは軽中量戦術車両(Light Medium Tactical Vehicle 、LMTV)カーゴトラックの荷台に搭載された状態で運用され、2名のオペレーターが操作する。航空自衛隊では73式大型トラックを改修したものを使用する。

主要な機器は新型兵器管制コンピュータ(Enhanced Weapons Control Computer、EWCC)、発射機間通信リンク・ターミナル(Data Link Terminal Upgrade 、DLU)、UHF通信機(UHF Digital Data Link、DDL)、UHF通信ルーティング・インターフェース装置(Routing Logic Radio Interface Unit Upgrade、RLRIUーU)、2人分の操作コンソール(Man Station、MS)である。

最大16台の発射機を接続でき、同時に8台の発射機を制御する。発射機との通信はVHF無線または光ファイバーによって行われる。RSとは有線でインターフェイスする。

情報調整装置

情報調整装置(Information Coordination Central、ICC)の形式名称はAN/MSQ- 116(Config.2形態以前)又はAN/MSQ-133(Config.3形態以降)。1高射群(BN:Battalion)に1台のICCが配備され、隷下に6台のECSを置く。ECSと外観はほぼ同様であり、2名のオペレーター(指揮官)が搭乗する。上位組織及びAWACSとの連接が可能(日本ではさらに自動警戒管制システム BADGEとの連接が可能なように改修され、現在で後継システムの新自動警戒管制システムであるJADGEと連接が可能とされている)。ECSとはUHF無線によってインターフェイスする。

無線中継装置

無線中継装置(Communication Relay Group、CRG)の形式名称はAN/MRC-137(Config.2 形態以前)又はAN/MRC-147(Config.3形態以降)。ECS-ICC間の通信でUHF無線の見通しが取れない場合、CRGを間に挟んで通信を中継する。ECS-ICC間の通信はPADIL(PATRIOT AIR DIFENCE INFORMATION LANGUAGE)というフォーマットで行われており、音声・データ(航跡情報等)が多重化されている。なお日本では山岳地であることを考慮して、有線接続にてECS-ICC間の通信ができるよう独自改修が行われている(後述)。

アンテナ・マスト

アンテナ・マスト・グループ(Antenna Mast Group、AMG)の形式名称はOE-349/MRC。ECS、ICC及びCRGはそれ単体ではUHF無線通信が行えない。AMGはいわば外付けのUHFアンテナであり、それぞれに接続されて運用される。

発射機

発射機(Launching Station、LS)の形式名称はM901。M901発射機では最大4発のミサイル(STD弾、 PAC-2弾、SOJC弾、GEM弾)、M902発射機では最大16発のPAC-3弾を搭載する(M902発射機にSTD弾、PAC-2弾、SOJC弾、 GEM弾は搭載できるが、PAC-3弾との混載は不可)。ECSとは(SINCGARS)VHF無線または光ファイバーによってDLTを通してインターフェイスする。15KW-400Hz発電機を1基持つ。1パトリオット中隊は5~8基の発射機を運用する。LSは専用の発電機(ディーゼルエンジン式発動発電機)を搭載している。

発電機

EPP-III発電プラント。M977 HEMTTに搭載。 150KW 208V-400HzACを供給するディーゼルエンジンが2基。283.9リッターの燃料タンク2個。太い給電ケーブル。 ECSとRSには、EPP-III(Electric Power Plant-III)により電力を供給する。ICCとCRGには、EPU(Electric Power Unit)により電力を供給する。またAMGには、接続されているECS、ICC又はCRGから電力供給を受ける。航空自衛隊仕様は、国産開発のガスタービン発電装置に改良されている。

地上装置の形態推移

開発当初は1990年代の航空脅威に対処する性能とされていたが、経年による脅威変化などに対応するため、各種改良が施され、現在の運用に至る。

BASIC形態

配備当初の形態。

PAC-1形態

PAC-1形態は初期型のECCM(敵の電子妨害に対抗する装置)やソフトウェア等を改修したものである。

PAC-2形態

PAC-2形態は弾道ミサイルの迎撃任務に対応して弾頭の破壊力等を向上したものである。湾岸戦争で使用され、イスラエルやサウジアラビアへ発射されたスカッドミサイルを迎撃した。それぞれの迎撃率は、アメリカ軍の発表によればサウジアラビアで70%、イスラエルで40%であるが、実際にはこれよりも低い確率だったのではないかと見られている[2][3]。これはPAC-2ミサイル(MIM-104C)が爆発で飛散する破片によって目標を破壊する方式であったため、弾道ミサイルに命中しても弾頭の機能を無力化できずに被害が出る場合があったことによる。

QRP形態

湾岸戦争で実戦投入されたPAC-2に発見された不具合に対し、物理的・ソフトウェア的に応急的な対処を施した形態。主な変更点は、レーダ装置の不要放射を抑制するレーダシュラウドの装着、GPSを利用した自動自己位置評定装置の搭載(RS,LS)による布置展開作業の自動化などである。

PAC-3形態

弾道ミサイルへの対処能力を本格化するため、さらなる能力向上を図った形態。変更の内容は、PAC-3弾の採用、RSの目標識別・捜索能力の向上、通信能力の向上などである。PAC-3形態は最初から完成された状態で配備された訳ではなく、PAC-3/Config.1とよばれる形態から始まり、現在米国で配備されている最新のPAC-3/Config.3形態へと至っている。

ハードウェア的な改修項目としては、レーダ装置の目標識別計算装置の更新や広帯域波形送受信・処理装置(Radar Enhancement Phase 3, REP-3、Classification Discrimination Improvement 3, CDI-3)の搭載、また、ECSやICC、CRGでは新型のRLRIU-U(旧型もRLRLI-Uと呼ばれるが、偶然であり、中身は別物である)、新型通信多重化装置(Integrated Digital Opperator Control Station、IDOCS)、これに伴う通信能力の向上(Remote Launch, Communication Enhanced Upgrade、RL/CEU)などがある。特にRL/ECUによって発射機をより遠くへ設置できるようになり、弾道弾に対する防護範囲が向上している。

日本が現在導入をすすめているのはこの最新の形態である。なおミサイル自体の名称であるPAC-3と混同している文献があるが、地上装置(ECS 等)とミサイルは別の形態名称で呼ばれており、注意が必要である(単にPAC-3形態と言っても通用するが、正しくはPAC-3/Config.3形態である)。なおConfig.3へと形態が進化した際、RS、ECS、ICC、CRG、LSの形式名称が変更されているが、これはそれぞれが搭載する機材が能力向上に伴って大幅に変更されたためである。

ミサイル概要

初期型であるMIM-104Aがアメリカ軍に引き渡されたのは1984年からであるが、逐次近代化改修がされている。それらはPAC-1、PAC-2、PAC-3という3つの世代に大きく分けられることが多い。「PAC」は "Patriot Advanced Capability" の略である。ナイキミサイルに比べて射程の延伸、対ECM性(ECCM)やジャミング機構の向上、低高度目標撃墜能力の付与といった機能向上がなされている。

ミサイル詳細

ミサイルの種類

パトリオットで使用されるミサイルは以下の通り。

* STD(MIM-104A)弾:初期形態から採用されているミサイル。主に航空機対処用。
* SOJC(MIM-104B)弾:ジャミングを行う目標に対して対処するミサイル。
* PAC-2(MIM-104C)弾:弾頭のフラグメントを大型化するなど、弾道弾対処能力を強化したミサイル。
* GEM(MIM-104D)弾:シーカーの低雑音化など、目標への誘導性能を向上させたミサイル。
* GEM+(MIM-104E)弾:GEM弾のさらなる改良型。
* PAC-3弾:新たに設計されたミサイルで、サイドスラスタやリサリティ・エンハンサを搭載。主に弾道弾対処を行う直撃型ミサイルである。MIM-104シリーズとは異なる。

ミサイルの誘導

パトリオットでは(PAC-3弾以外は)TVM(Track Via Missile)と呼ばれる誘導方式が採られている。これは、ミサイル発射後、RSからTVMレーダ波を目標へ照射し、その反射波をミサイルが捉えながら誘導を行う方式である。以下に概略を示す。

1. ミサイル発射後、RSから目標へTVM波を照射する。
2. ミサイルシーカーでTVM反射波を受信し、RSへダウンリンクする。
3. RSからの情報をECSで処理し、誘導計算を行って、RSからミサイルへアップリンクとして誘導情報を送信する。
4. 終末誘導では、目標からのTVM反射波を追ってミサイルは目標と会敵する。

TVM方式はECMへの対処を重点的に考えられた誘導方式であり、その内容は複雑である。コリレート・トラック、セミアクティブ・トラックとも呼ばれる。 なおPAC-3弾は自らのシーカーでレーダ波を出しつつ目標と会敵するため、TVM誘導は行われていない。

GEM弾

PAC-2ミサイルの誘導性能等を向上し、航空機及び巡航ミサイル等への対応能力が高められた。

PAC-3弾

対弾道ミサイルとして開発がほぼ終わっていたERINTミサイル(Extended Range Interceptor Missile)を既に発射機として実績があったパトリオットの発射システムに載せたのがパトリオットPAC-3である。PAC-3はそれまでに比べて細身で、今までは1発が入っていたミサイル・キャニスタに4発が格納できるようになった。これにより1発射機あたりミサイルを16発搭載できる。小型化されたことにより対航空機の射程距離は半減した。破壊力を高めるため、弾頭は近接信管だけではなくヒット・トゥ・キル(Hit-to-kill)、つまりPAC-3ミサイルの飛翔体全体を目標弾道ミサイルに直接衝突させ、その運動エネルギーによって目標を粉砕破壊する方式のものに変えられた。翼による姿勢制御だけではなく、ACM(Attitude Control Motors)と呼ばれるサイドスラスタを前部に装備し機動性を高めている。Kaバンドのアクティブ・レーダー・シーカーにより誘導される。

弾道ミサイルへの対処のため、従来までの破砕飛散弾頭を、リサリティ・エンハンサと呼ばれる弾頭に置き換えている。これは航空機や空対地ミサイル、巡航ミサイルなどに対処する場合、直撃寸前時にみずからの胴径方向に低速で225グラムの金属ペレット24個を放出し、見かけ上のミサイル胴径を増加させ、脅威対処能力を向上させるものであり、従来の破砕飛散型弾頭とは根本的に設計思想が異なるものである。なおこのリサリティ・エンハンサは弾道弾対処任務の際には使用されない。

PAC-3ミサイルの航空機や空対地ミサイルに対する対処能力は、射程距離のみ従来のPAC-2やGEM弾に譲るものの(目標撃破能力は同等とされている)、その代わりとしてパトリオットシステムを、高速で飛来する弾道ミサイルへの対処能力を持つ複合型防空システムに生まれ変わらせた。

パトリオット・ミサイルPAC-3はMSE(Missile Segment Enhancement)と呼ばれる向上計画が進行しており、フィンとロケットモーターの変更により最大で50%の性能向上が2008年に予定されている。派生型として中距離拡大防空システムがある。これはPAC-3弾を射程延伸した改造型ミサイルを用いた、弾道弾以外の対空目標も対処可能な自走式の野戦防空システムである。

要目

開発レイセオン、ロッキード・マーティン共同

* PAC-2:翼幅84 cm・弾体径41 cm・重量900 kg・上昇限度24,000 m・対航空機射程70 km対弾道弾射程20 km(PAC2GEM+・開発レイセオン)

* PAC-3:翼幅51 cm・弾体径25 cm・重量320 kg・上昇限度15,000 m・対弾道弾射程20 km(旧エリント・開発ロッキードマーチン)

PAC-3対応のアップグレード

パトリオット・ミサイルPAC-3に対応するために兵器操作コンピュータ(WCC)とソフトウェアを交換アップグレードする。通信機器はすべて調整されなおす。このアップグレードによって、PAC-3オペレーターは統合戦術情報伝達システム(Joint Tactical Information Distribution System, JTIDS)に対応し、LバンドのTDMA戦術データ・リンク・ネットワークであるリンク 16に接続して弾道弾の迎撃に必要な情報が入手でき、またネットワークに対して情報を提供できるようになる。また、新しいソフトウェアによって「テーラード弾道ミサイル・サーチ機能」を実現でき、対応する必要がある特定の必要な方向・角度にのみ集中して捜索が行なえる。また弾道弾が化学兵器弾頭か子爆弾運搬型弾頭かによってそれぞれの禁止高度を設定して正しい高度で撃墜する機能を備える。レーダーも進行波管を加えることで捜索・探知・追跡の性能が向上した。

パトリオット・ミサイルPAC-3のソフトウェア向上は続いており、対レーダーミサイル、UAV、巡航ミサイルを識別できるようになっている。

さらに詳しく → MIM-104 パトリオットミサイル  ミサイル防衛  地対空ミサイル



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