原子力潜水艦 (Nuclear submarine)

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2012/12/22(土)
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原子力潜水艦(げんしりょくせんすいかん、原潜(げんせん))とは動力に原子炉を使用する潜水艦のことである。

概要

艦の基本的な構造は、もう一方の代表的な潜水艦の推進動力方式であるディーゼルエンジンを備えた通常動力型潜水艦と大きくは違わない。船体は通常型と同様に涙滴型や葉巻型をしており、船体上部前寄りにセイル、その側面か船体前部側面に潜舵を持ち、艦尾のスクリュー・プロペラで推進する。

一般的には通常型潜水艦より大型となり、どちらかと云えば通常型潜水艦が沿岸域での運用を得意とし、原子力潜水艦はより広い外洋域での運用を得意とするが、専門化している訳ではない。

原子力技術を持つ国でしか製造できないため、保有国は限られ、2012年現在、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インドの6ヶ国が保有している。

インドを除く5カ国が、攻撃型原子力潜水艦と弾道ミサイル原子力潜水艦(=戦略ミサイル潜水艦)という2種の潜水艦を保有しており、攻撃型は通常型潜水艦と同様に敵水上艦船や敵潜水艦を攻撃し、場合により隠密裏に人員輸送を行なうが、弾道ミサイル型は通常型潜水艦では行なえない弾道ミサイルの発射プラットフォームとしての任務を担っており、攻撃型より大きな船体となっている。

アメリカ海軍は21世紀に入って、弾道ミサイル搭載型を巡航ミサイルの発射プラットフォームである巡航ミサイル潜水艦へ改造している。

特徴

以下に原子力潜水艦の特徴を示す。

原子力による主機関

原子力潜水艦とは、その名の通り推進動力に原子力を使用するものであり、原子炉を熱源として高温高圧の水蒸気を発生させ、この水蒸気で蒸気タービンを駆動することによって、スクリューを回し、推進力を得ている。

冷却液の循環系は安全のために複数設けられているのが通常である。原子力空母では1つの艦に原子炉を2基以上備えているが、原子力潜水艦では1基、または多くても2基である。

現在までの原子力潜水艦はすべて加圧水型原子炉(PWR)を搭載していて、もう一方の代表的な原子炉形式である沸騰水型原子炉(BWR)が採用された事はない。これは潜水艦が海洋状態や気象、艦の機動によって船体が揺れたり傾いたりする時に、沸騰水型では冷却水が炉心を十分に冷やせない事態が懸念されるためである。

加圧水型原子炉では蒸気発生器、加圧水を循環させる強力な循環ポンプとその高圧配管、さらに2次冷却水のためのポンプと配管が、沸騰水型原子炉よりも余計に必要とされるが、1次冷却水系統と2次冷却水系統が分離されているため2次系にある蒸気タービンや復水器といった補機類は放射線の危険から離れた位置で点検整備が可能となる。

しかし、一次冷却水が何らかの形で漏洩した場合はこの限りではなく、特に蒸気発生器は複雑で脆弱な配管構造を持つので、信頼性の低い初期の原子力潜水艦においては、しばしば致命的な放射能漏れ事故の原因となった。

加圧水型と沸騰水型のいずれであっても人体に有害な放射線を遮蔽して他の船内を安全にするため、原子炉は鉛等が組み込まれた専用の耐圧隔壁で分離された原子炉区画内に設置されている。

原子炉区画は艦の後ろ寄りに設けられていることが多く、艦の主要な部分を占める前部とタービンや操舵機などのある後部を結ぶために、鉛などで防護された狭い通路が原子炉区画の上部や側面を貫いている。

長期間の連続潜航

原子炉の核燃料棒の交換は数年から十数年に一度で済むため、ディーゼル燃料を消費する通常型潜水艦のような航続距離の制約や頻繁な燃料補給の手間は無く、酸素を必要としないために長期間の連続潜航が可能である。もちろん、蒸気タービンの軸受や減速機用の潤滑油は定期的な補給が必要となるが、他の燃料に比べ、その頻度は少ない。

艦内の人員に必要な酸素も豊富な電力で海水から電気分解によって作り出し、二酸化炭素も化学的に吸着除去するので数か月間も浮上の必要を無くしている。長期間の連続潜航が可能になっても、乗組員の心理的な影響、新鮮な食料の補給、艦外からの整備などが必要なので、実際には長くても2か月程度の連続潜航しか行わない。

原子力機関は最大出力でも燃料消費をそれほど考慮する必要が無いために、必要なら長時間高速航走することが許されるので、ディーゼル潜水艦と比べれば水中機動の自由度が増したとされる[2]。ただ、高速での航行は水中騒音も大きくなり、探知される可能性が高まるので、それほど頻繁に行われるものではない。

騒音問題

原子力潜水艦の欠点は、電動機推進時(エンジンは停止)のディーゼル・エレクトリック方式の潜水艦に比べ、静粛性が劣ることである。

高速回転する蒸気タービンの軸出力で低回転のスクリューを回すため、減速ギヤを介在させる必要があり、(ギアド・タービン方式)この減速ギヤが大きな騒音発生源となる。

また、原子炉作動中は、冷却水循環ポンプを常時動かしておかねばならず、加圧水型原子炉ではこのポンプも大きな騒音発生源となっている。

そのため、アメリカ海軍の最新原子力潜水艦では、低出力時には冷却材の自然循環のみによる運転が可能とされており、ポンプの運転が不用と云われている。

また、原子力潜水艦特有の問題とも云えないが、原子力によって大きな推進力が得られても、スクリュー・プロペラで生じる騒音も大きくなるという問題もある。その為、ポンプジェット方式による推進方式を採用する潜水艦も一部にある。

ポンプジェットは高速で航行する魚雷やテクノスーパーライナーや高速フェリー、ミサイル艇等の高速艇等に使用されてきた実績があるが高速性、静粛性において優れていたが、推進効率に関しては従来のスクリューよりも劣る為、通常動力型潜水艦では実験的に使用された段階に留まっていた。しかし、エネルギー源の枯渇の心配のない原子力潜水艦ではこの利点を生かせる為、採用している例がいくつかある。

ギアド・タービン方式特有の弱点を克服するため、蒸気タービンで発電機を動かし、電動モーターでスクリューを駆動する原子力ターボ・エレクトリック方式による推進システムが採用された例がいくつかある。例えば、フランス海軍の原子力潜水艦はすべてこの方式を採用しており、他にもアメリカ海軍が2度(「タリビー」、「グレナード・P・リプスコム」)試用している。

ただ、この方式は、蒸気タービン方式(ギアド・タービン方式)に比べて出力/重量比・効率・整備性が悪く、水中速力も劣る。そのため、この方式を常用するのは、現在ではフランス海軍のみにとどまっている。この方式は短時間であれば原子炉を低出力に維持した状態で内蔵の蓄電池によって航行する事も可能で、蓄電池を介して電力が供給されるので電動機の出力応答性も優れる。

また、タービンと推進器を伝達軸で連結する必要がない為、水密区画に伝達軸を通す為の穴を開ける必要がないので、ダメージコントロールや機器配置の自由度に優れる一面もある。

また、近年では交流電動機やパワーエレクトロニクスの導入により整備性や効率、出力に関しても以前よりは改善されつつある。フランスがこの方式を採用し続ける理由はギアド・タービン方式よりも運用上の利点が大きいと判断していると推測される。

他の問題点

開発・建造・維持運用に非常に費用がかかり、用途廃止となったあとの原子炉・核燃料の処理の問題、メルトダウンや放射能漏れの危険性などがある。

アメリカ海軍では新造艦の原子炉に濃縮度20~30%程度の高濃縮ウランを用いた燃料棒を使用することで燃料の寿命を艦の寿命と等しくし、実質的に燃料交換を不用にして、原子炉の維持費の大きな部分を占める燃料棒の交換費用を無くし稼動率の向上と放射性廃棄物の減少をはかっている。ただ、この高濃縮ウランの使用が原子力潜水艦の危険性をさらに高めたという指摘がある。

通常型潜水艦の特徴

原子力動力との対比のために通常動力での潜水艦(通常型潜水艦)の特徴を以下に示す。以下の通常型潜水艦にはAIP動力潜水艦は含まれないものとする。

通常型潜水艦は、水中では蓄電池を動力とし、この充電のために適宜、浅深度を航走してシュノーケルから空気を取り入れ、内燃機関であるディーゼルエンジンで発電機を動かさなければならない。通常型潜水艦は通常の潜水航行では充電したバッテリーとモーターしか使えないため、バッテリーを消耗すると潜水航行できなくなる(連続潜航時間の制約)。

また、内燃機関の燃料が尽きればそれ以上の航海は不可能である(連続航海日数の制約)。通常型潜水艦の連続潜航時間および連続航海期間を延長する努力は長年にわたって行われてきたが、単に「潜ることができる艦 (submersible ship)」ではなく「潜ることが専門の艦」、すなわち潜航状態を常態とする艦が達成されたのは、原子力機関の長所を生かした原子力潜水艦が登場してからのことである。

潜航中の通常動力潜水艦の動力は蓄電池に蓄えられた電力のみで、これによる水中速力は最大でも20数ノットが限界であり、また、その速度で航行した場合には、短時間で蓄電池の電力を使い切ってしまう。

運用

原子力潜水艦は、当初、第二次世界大戦までの潜水艦の延長線上において対水上艦戦闘任務を主務とした。だが、水中性能の向上にともなって、潜水艦を水上や空中から探知することが困難になり、脅威の度合いが増すにつれて、潜水艦を潜水艦で「狩る」水中戦の重要度が増すこととなった。こうして、遅くとも1960年代末以降には、潜水艦に対する最も有効な兵器は潜水艦であるとの認識が一般化した。

また、その特性上、秘匿性が非常に高いことを活かし、核戦略の一端を担う海中ミサイル基地とでも言うべきタイプも登場した。こうした潜水艦を弾道ミサイル原子力潜水艦、戦略ミサイル原子力潜水艦(戦略原潜)などと呼ぶ。

初期のポラリス原潜では、核弾頭1発を搭載した長射程の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)16基を装備していたが、MIRV技術の進歩により、現在では、1発あたり10 - 14発の核弾頭を搭載した多弾頭式の弾道ミサイルを16 - 24基搭載するまでになっている。

弾道ミサイル原潜は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の固定サイロよりも発見されづらいという特徴があるため、先制攻撃の手段としてではなく攻撃を受けたあとの反撃手段・第二次攻撃手段としての意味合いが強い。

こうした潜水艦の登場は、冷戦を背景にしたものに他ならないが、アメリカ海軍のジョージ・ワシントン級(1番艦は1959年就役)を嚆矢として、はじめはアメリカ・ソ連、次いでイギリス・フランスが弾道ミサイル原潜を保有するようになると、弾道ミサイル原潜の護衛または捜索・追尾・攻撃が攻撃型原子力潜水艦の重要な任務になった。

そのほかにも対地攻撃や対艦攻撃用の巡航ミサイルを装備した型もあり、このタイプのことを巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)などと呼ぶこともある。これは、旧ソ連海軍において、仮想敵たるアメリカ海軍の空母戦闘群(現 空母打撃群)への対抗上、特に大きく発展した。

歴史

1940年代、ウラン核分裂反応の軍事利用に関する研究がなされた過程で、核エネルギーを利用した潜水艦の構想がナチス・ドイツや旧日本海軍等で考えられていた。

戦後、ドイツの原潜構想を知ったアメリカ海軍のハイマン・G・リッコーヴァー大佐は、その革新性に着目し、原潜開発を上層部に訴えた。当時の軍事的な核利用は爆弾が中心であり、巨大な原子力発電プラントを潜水艦に搭載することなど夢のまた夢と考えられていたため、リッコーヴァー大佐の提案はまともに取り上げられなかった。

しかし、リッコーヴァー大佐がチェスター・ニミッツ提督に直訴までして実現を訴え続けた結果、最終的にはその熱意が認められ、合衆国海軍原子力部が設立され、リッコーヴァーはその長に就任した。大佐は熱心に原潜開発を強力に推進した。

こうして、リッコーヴァーの指揮の下、世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」(1954年竣工)が開発された。このことからリッコーヴァーは「原潜の父」と呼ばれている。ノーチラスは世界ではじめて北極の下を潜航して横断したことでも知られる。

また世界初の戦略ミサイル原潜は同じくアメリカが開発した「ジョージ・ワシントン」で1959年に竣工した。「ジョージ・ワシントン」は、アメリカ海軍のラボーン少将指揮の下で、搭載するポラリス・ミサイルを含めてわずか4年という短期間で開発された(この時、用いられたのが、マネジメント手法として今日でも知られるPERT(Program Evaluation and Review Technique)である)。

日本の原潜保有の議論

1958年、帝国海軍時代より通常動力潜水艦の建造実績を積み重ねてきた川崎重工は原子力潜水艦を建造した場合のコスト、必要な設備等について81ページのレポートをまとめており、後年明らかとなった。このレポートによれば、当時の試算では後の攻撃型原子力潜水艦に相当する艦1隻を建造するためには通常動力艦10隻分の資金を要すると結論されたと言う。

1960年3月11日、衆議院内閣委員会において中曽根康弘科学技術庁長官はアメリカが豊富な原子力推進艦艇の建造実績をもって商業原子力船サバンナを建造していることと比較して

「日本は原子力潜水艦なんかを作る力も意思もありません。従ってやはり商業採算ベースに合うということが非常に大事」と答弁しており、商業化によってコストの問題が解決されない限りは「(原子力潜水艦を建造する、しないという)政治力が働く余地がない」

としていた。

作家の谷三郎は「ソ連海軍力の伸長が続けば1990年代には必要性が高まる一方、日本には建造する能力があり、1950年代よりは通常動力艦と比べたコストを5倍程度まで低減させることが可能」であると1986年に出版された著書で主張していた。

2004年の「防衛計画の大綱」の策定時に、防衛庁(当時)の「防衛力の在り方検討会議」に於いて、原子力潜水艦の保有の可否が検討されていた。

さらに詳しく → 原子力潜水艦




自衛隊が世界一弱い38の理由―元エース潜水艦長の告発自衛隊が世界一弱い38の理由―元エース潜水艦長の告発
(2009/05)
中村 秀樹

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