遺棄化学兵器問題

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2011/03/17(木)
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遺棄化学兵器問題(いきかがくへいきもんだい)とは、他国領域に遺棄されたとされる化学兵器毒ガス)の処理に関する国際問題である。化学兵器禁止条約の成立により、同意なく他国領域に遺棄した化学兵器の処理が、遺棄国に義務付けられている。同条約に該当する遺棄化学兵器として、中国に存在する旧日本軍の化学兵器のほか、イタリア及びパナマに存在するものが申告されている。遺棄の事実や処理事業を巡って問題となっているものがある。

中国における遺棄化学兵器問題

旧日本軍化学兵器の存在状況

中国には第二次世界大戦期に日本軍が保有していた化学兵器が残存しており、これらが日本軍の遺棄に由来するものであるとされ問題となっている。第二次世界大戦期の旧日本軍は、中国に関東軍化学部(通称号:満州第516部隊)や特種自動車第1連隊などの化学戦部隊を駐留させており、各種の化学兵器を満州を中心とした地域に集積していた。終戦までに生産された化学兵器の総量は、「きい剤」と呼ばれたマスタードガスやルイサイトなどのびらん剤砲弾約63万発、「あか剤」と呼ばれたジフェニルシアノアルシンなどのくしゃみ剤砲弾約125万発、同発煙筒266万個、そのほか「みどり剤」と呼ばれた催涙剤のクロロアセトフェノン(CNガス)などがある。一部は訓練や日中戦争の実戦で消費されたものの、大部分は使用されないまま終戦を迎えた。終戦時点で中国を含む日本国外に存在した化学兵器の量は、びらん剤砲弾2万-12万発・くしゃみ剤砲弾72万-88万発・同発煙筒125万個などと推定されている。

吉林省敦化市にあるハルバ嶺地区には、日本側推定30万~40万発の日本軍の化学砲弾などが埋設されている。ハルバ嶺地区には、各地に遺棄されていたという化学兵器が、1950年代-1960年代に中国軍によって集められ、2箇所に埋設されて現在に至っている。当初は67万4千発と推定されていたが、その後の調査で推定量が下方修正された。他方、中国側は200万発が存在すると主張しているが、日本側研究者は過大であると評価している。いずれにしてもハルバ嶺は中国国内で最大の埋設量がある地点と見られている。このほか、北は黒竜江省から南は広東省に至るまでの中国各地にも旧日本軍の化学兵器は残存しており、2010年初頭までには約4万7千発が回収されている。中国側はハルバ嶺以外の大量存在地として、吉林省梅河口市にも黒竜江省尚志市から移送したびらん剤弾20万発が存在すると主張しているが、やはり日本側は過大な数字であると推測している。以上の砲弾などに含有される化学剤の総量は比較的少量で、化学砲弾等の総数が約70万発であると予想していた時点でも、約500トンと推定されていた。

現存する旧日本軍の化学兵器には、既述のように「きい剤」(びらん剤)・「あか剤」(くしゃみ剤)・「みどり剤」(催涙剤)ほかが含まれている。ヒ素を含む化学剤があるため、処理に特別な配慮が必要とされる。形態には化学砲弾のほか、発煙筒式のものや保管用のドラム缶入りのものなどがある。「きい剤」または「あか剤」の化学砲弾が多くを占めると推定されている。

残存する旧日本軍化学兵器による事故も発生している。2003年8月4日にはチチハル市の工事現場において地中で発見されたドラム缶から旧日本軍の化学剤が流出して1人が死亡、43人が負傷した。日中政府間協議の結果、3億円の解決金が遺棄化学兵器処理事業費の一部として支払われた。

交渉及び処理の経過

1987年に中国から遺棄国の責任について発言があった後、1990年に中国から日本に対して非公式な旧日本軍化学兵器処理についての打診があった。翌年から日中の局長級協議が始まり、日本の外務省から現地へ第1回調査団が送られた。1992年に中国から公式に日本の責任を問う声明が発表された。CWC発効が迫った1996年から日中協議が本格化し、1997年8月に第2次橋本内閣で閣議了解された「遺棄化学兵器問題に関する取組体制について」に基づき、内閣官房に遺棄化学兵器処理対策室が設置(後に内閣府には遺棄化学兵器処理担当室が設置)された。そして、1999年7月に第1次小渕改造内閣下で「日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」が署名され、翌年から実際の処理作業が開始された。

処理事業は、ハルバ嶺とそれ以外の小規模事業に分けて行われている。ハルバ嶺については、当初の計画では現地に燃焼式の無害化プラントを設置し、作業工程を遠隔操作ロボット中心にするなどとされていたが、2008年度試掘調査(2008年12月-2009年1月)の結果、地中障害物の多さなどから機械作業は困難との判定がされた。そこで手作業での発掘要領の策定などを進めることとしており、2009年度にはより精密な試掘調査が実施されている。

小規模事業については、手作業を中心に発掘と回収が行われ、梱包のうえ中国各地の保管施設に集積して、その後に処理を行う計画である。すでに旧軍関係者などからの聞き取りや文献調査により遺棄化学兵器の捜索が行われており、約3万6千発が回収された南京市周辺のほか、各地においても発掘回収されている。小規模事業対象の埋設地・総量の把握は困難だが、外務省調査と内閣主導作業の成果を合わせて40か所以上から約4万7千発が回収され、中国国内の保管施設に置かれている。廃棄処理には、トレーラーで中国各地を移動可能な移動式処理設備の使用が安倍晋三首相(当時)と温家宝首相の会談で合意された。まずは南京市及び石家荘市での移動式処理設備稼働が予定されており、2010年9月に南京市の処理設備は運用を開始した。

CWCが発効した1997年から10年以内の処理を目指して作業が行われたが、期限内の完了は困難となったため、2006年にOPCW執行理事会において2012年4月までの処理期限延長が承認された。しかし、この期限もハルバ嶺事業の凍結で達成不能となることが確実視されている。

遺棄の事実についての論争

中国に残る埋没化学兵器は日本軍によって遺棄されたのではなく、終戦時の武装解除に伴い中国軍やソ連軍に引き渡され、その後に中国側によって埋没されたものではないかとの指摘がある。これについて日本政府は、旧日本軍の化学兵器であると判明したものについては、中国側が残置に同意していた明確な根拠がない限り、条約上の処理義務を負うものとの政府参考人による国会答弁を行っている。そして2005年時点では、手投式催涙弾の引渡記録が発見された例はあるものの、そのほかの明確な根拠史料はないとしている。その後、中国本土とは日本側の指揮系統が異なる台湾での化学兵器引渡に関しては、「あか剤」「みどり剤」の発煙筒を第10方面軍隷下の日本陸軍部隊が中国国民党軍に引き継ぎした際の記録が確認された。しかし、中国本土に関しては、シベリア史料館(山形県)所蔵の文献調査などが進められているものの、史料の1/3の分析が終わった段階では化学兵器の引渡記録は全く発見されていない。

また、日本軍の保有していた化学兵器以外に、中国製やソ連製の化学兵器も含まれてしまっているのではないかとの指摘もある。日本政府によれば、発掘後に仕分けを行って旧日本軍の化学兵器と確認されたもののみを処理事業対象として回収しているという。広東省広州市黄埔区で2006年11月-2007年2月に行われた発掘作業では461発の砲弾が発見されたうち、旧日本軍の化学兵器と確認できた砲弾など73発と不明のもの24発が事業対象として回収され、残りは中国側に引き渡された。ハルバ嶺での2008年度試掘調査では、661発の砲弾が発掘されたうち641発が化学砲弾だった。

処理事業の運営に関する批判

遺棄化学兵器処理事業には、1999年度から2007年度までで総額540億円が投じられている。その支出内容が不透明で、不要な施設整備に用いられたりする虞があると批判されてきた。これに対して、日本政府は、ヘリポートや変電所の整備は処理事業に必要な範囲で、支出は適切に行われているなどと反論していた。しかし、前述のように、大規模な施設整備が予定されたハルバ嶺事業については、2009年1月に合理性がないとして日本政府が事業の見直しを決めたと報じられている。

また、処理事業のコンサルタント業務を受注していたパシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)が、人件費の水増しにより事業費を日本国からだまし取った疑いが生じている(PCI事件)。PCIや遺棄化学兵器処理機構の役員らが詐欺罪の容疑で起訴され、一審で有罪判決を受けた。

さらに詳しく → 遺棄化学兵器問題



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(1996/08/15)
高 暁燕

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タグ : 遺棄化学兵器問題 化学兵器 毒ガス

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