【西岡力】 北朝鮮による、韓国砲撃事件について

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2010/11/25(木)
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延坪島砲撃事件(ヨンピョンドほうげきじけん)は北朝鮮が韓国の大延坪島を砲撃した事件。

概要

2010年11月23日14時34分ごろ(日本時間同)、韓国が主張する黄海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を越え大延坪島に向けて朝鮮人民軍が砲弾約170発を発射、90発が海上に、80発が同島の陸上に着弾した。これに対し、韓国軍は自走砲(K9 155mm自走榴弾砲)で80発を使用し対抗射撃を行い、F-15K・KF-16戦闘機を島に向け非常出撃させた。

この事件で韓国の海兵隊員2名、民間人2人が死亡、16名が重軽傷、民間人3人が軽傷を負い山火事や家屋の火災が発生した。住人1,300人には避難命令が出された。韓国軍合同参謀本部は直ちに珍島犬1号(非常事態警報)を発令し、金滉植国務総理も全公務員に対し非常待機命令を発令した。

韓国政府高官は、砲撃は韓国軍の訓練に対する反発との見解を示している。事件発生時に韓国軍は黄海付近で実弾を使った軍事訓練を実施していた。北朝鮮軍はこれに先立って「韓国軍が射撃を行えば黙っていない」と電話通知文で抗議していたが、韓国軍側はこれを無視して訓練をしていた。

背景

朝鮮戦争で国連軍と北朝鮮軍の休戦以降、北朝鮮は韓国の設定した海上の北方限界線(NLL)周辺で軍事行動を繰り返していた。北朝鮮政府は北方限界線を認めず、さらに南方の豊かな漁場と韓国の実効支配する延坪島その他の島を北朝鮮側に含む海上軍事境界線を主張している。北朝鮮軍はかかる海上軍事境界線を根拠として1990年代末から2000年代初頭にかけて何度か北方限界線を超えており、1999年(第1延坪海戦)、2002年(第2延坪海戦)に同じ地域で海戦に発展している。

また、延坪島付近ではないが、2009年には大青島の近海で銃撃戦を引き起こしている(大青海戦)。同じく2010年には、白翎島西南海域付近で韓国海軍の哨戒艦が北朝鮮製の魚雷と思われるもので撃沈されるなど、緊張状態が続いていた(天安沈没事件)。

時系列

2010年11月23日

『読売新聞』2010年11月24日朝刊2面、『朝日新聞』2010年11月23日「北朝鮮の韓国砲撃をめぐる23日の動き」より

* 8時20分 - 北朝鮮が韓国の護国訓練の中止を求める電話通知文を送付
* 10時00分 - 韓国軍、中止を無視して訓練を開始
* 14時34分 - 北朝鮮が延坪島に攻撃開始
* 14時49分 - 韓国軍が対抗射撃。島民は防空壕などに避難
* 14時50分 - 韓国軍が周辺海域に珍島犬1号を発令
* 14時55分 - 砲撃戦が一時中断
* 15時00分 - 延坪島の観光客約200人が高速船で島から避難。島民の一部も漁船で脱出
* 15時10分 - 砲撃戦が再開
* 15時20分 - 日本政府、官邸に危機管理センターを設置
* 15時41分 - 砲撃戦が終了
* 15時48分 - 韓国軍が挑発をやめるよう北朝鮮に通知
* 15時50分 - 韓国消防防災庁が民間防衛隊の動員準備を伝達
* 16時05分 - 中国外務省報道官が冷静な対応を呼びかけ
* 16時30分 - 韓国の全公務員に非常待機命令
* 16時35分 - 韓国政府、安全保障関係閣僚会議を開催
* 17時00分
    o 韓国の消防救助隊員が仁川港に到着
    o 日本、菅直人首相が全省庁に情報収集と態勢準備を指示
* 18時06分 - 青瓦台が政府声明を発表
* 18時40分 - ホワイトハウスが非難声明を発表。アメリカ現地時間では午前4時40分と異例の緊急声明
* 18時56分 - 朝鮮中央通信が北朝鮮の声明発表を速報
* 19時28分 - 朝鮮中央放送(ラジオ版)が臨時ニュースで声明を発表
* 20時30分 - 韓国の金星煥外交通商大臣が在韓日本大使に状況を説明
* 20時37分 - 李明博韓国大統領が合同参謀本部を視察
* 20時45分 - 日本政府、官邸で緊急閣僚会議
* 22時00分 - ボズワーズ米政府特別代表が北京のホテルで「米中は自制的対応をとることで一致」

被害

北朝鮮からの砲弾は大延坪島の中央の丘陵地を越えて、島の南東部にある市街地まで到達した。韓国側兵士2名が死亡、KBSテレビによれば韓国側の死傷者は数十人にのぼるという。

11月24日、大韓民国海洋警察当局が延坪島の被害を調査したところ、砲撃が着弾した海兵隊官舎の建設現場で作業員2名の遺体が発見された。これにより砲撃の犠牲者は兵士2名、民間人2名の計4名となった。

対抗措置

韓国
青瓦台は、「わが軍は交戦守則に基づき即刻対応した。追加挑発時には断固対応する」と声明を発表。李明博大統領を筆頭に担当閣僚による安全保障会議を開催。李大統領は拡大を防止するよう指示した。統一部は2010年11月25日に予定されていた南北赤十字会談の無期限延期を発表した。

北朝鮮
朝鮮人民軍最高司令部声明として「南が、わが領海で射撃訓練を行う無謀な挑発行動を取った。このため、われわれは、これに対して断固たる軍事的措置を取った。今後も、南が、わが領海に侵犯するならば、無慈悲な軍事的打撃を続けるだろう」と警告、さらに「われわれが設定した境界線だけが存在する」とも述べた。

国際反応

アメリカ合衆国
ロバート・ギブズ大統領報道官は北朝鮮を強く非難するとの声明を異例の午前4時半(現地時間)に発表し、朝鮮戦争休戦協定を遵守するよう求めた。バラク・オバマ大統領は就寝中の午前3時55分(同)に報告を受け激怒したという。

日本
日本政府は15時20分に総理大臣官邸に対策本部を設置。外務省も情報収集を進めている。北澤俊美防衛大臣らは普段出入りする地上入り口を使わず報道陣を避けるように地下入口から防衛省に登庁した。また午後6時過ぎには内閣総理大臣:菅直人が緊急プレスインタビューに応じて「国民に備えは万全と言える態勢を作る」と発言した。また夜になって内閣官房長官:仙谷由人が記者会見を行い、「北朝鮮の砲撃は許し難い」などとする日本政府見解を発表した。

一方、菅首相は事件について「報道で知った」と明らかにした。一部からは内閣総理大臣への事件の第一報が民間レベルのニュースであったことは危機管理に問題があるとの声が出ている。菅首相は16時すぎ、公邸でテレビを見ながら「大変なことがおきたなあ…」と呟きながらも、民主党関係者と国会運営をめぐっての意見交換を優先していた。高木義明文部科学大臣は朝鮮学校への高校無償化適用について「重大な決断」として中止する可能性もあると表明した。

中国
中国外務省は「関係国が朝鮮半島の平和と安定のために努めることを望む」と韓国・北朝鮮双方に冷静な対応を求め、今後の動向に注目するとしている。その一方で、北朝鮮の突然の行動に対しては、修復に向かっていた外交状況を再び悪化させるとし、「快くは見ていない」としている。

ロシア
ロシア外務筋は「朝鮮半島の自制が必要」との見方である。セルゲイ・ラブロフ外務大臣は事件自体を非難したものの、「攻撃した者は重い責任を背負うべきだ。」と名指しは避けている。並びに事件が軍事衝突に繋がるのを防止しなければならないという考えを表明。

イギリス
ウィリアム・ヘイグ外相は「北朝鮮による韓国へのいわれのない攻撃を強く非難する」との声明を出した。

フランス
ミシェル・アリヨ=マリー外相は「最も断固たる態度で非難する」と声明。

オーストラリア
ジュリア・ギラード首相は「北アジアの安定を脅かすものだ」として北朝鮮に国際法の順守と敵対的行動の中止を求めた。またケビン・ラッド外相は日韓と対応を協議するとしている。

国際連合
韓国出身の潘基文事務総長は「深く懸念する。朝鮮戦争終結以来、最も重大な事件の一つだ」と、北朝鮮を非難。

影響

市場

砲撃のニュースが伝えられた時点で、外為市場ではUSドルがユーロ、円に対して大きく上昇、ユーロと円は下落した。先物市場ではアメリカ10年物国債が上昇、ウォン相場は1ドル1180ウォンに急落、米原油先物は23日朝の欧州取引で下落、ノンデリバラブル・フォワード1か月物も4%下落した。韓国中央銀行は市場の影響を懸念し18時から臨時会合を開いた。株式市場では、サムスン証券アナリストは、「これまでに北朝鮮が韓国に対してとった行動とは違うため、明日の市場は下落で始まるだろう」との見解。砲撃はミサイル発射よりは問題だが核実験ほどでもないとしている。

さらに詳しく → 延坪島砲撃事件


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