トカレフ TT-33 (Tokarev TT-33、Токарев TT-33)

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2010/10/17(日)
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トカレフTT-33(英: Tokarev TT-33、露: Токарев TT-33)は、ソビエト連邦陸軍が1933年に制式採用した軍用自動拳銃である。正式名称を「トゥルスキー・トカレヴァ1930/33」Тульский-Токарева 1930/33(トゥーラ造兵廠・トカレフ 1930年/33年式)と呼び、略してTT30/33とも呼ばれるが、一般には設計者フョードル・トカレフにちなみ、単に「トカレフ」の名で知られている。

本来必須な筈の安全装置すら省略した徹底単純化設計で、生産性向上と撃発能力確保に徹した拳銃であり、過酷な環境でも耐久性が高く、かつ弾丸の貫通力に優れる。第二次世界大戦中~1950年代のソ連軍制式拳銃として広く用いられた。

1950年代以降、ソ連本国では後継モデルのマカロフ PMに置き換えられて過去の銃となったが、その後も中国を始めとする共産圏諸国でライセンス生産・コピー生産が行われた。中国製トカレフは1980年代以降日本にも多数が密輸入され、暴力団等の発砲事件にしばしば使われることで、一般人にも広くその存在を知られている。

開発

ソ連国営トゥーラ造兵廠の銃器設計者フョードル・バシーレヴィチ・トカレフ(Fedor Vasilevich Tokarev 1871-1968) が、1929年に開発した「TT-1930」が原型である。トカレフはその生涯に多数の銃器類を設計しており、自動小銃開発にも早くから取り組んだことで著名な人物であるが、最も広く知られる「作品」は、このTT-1930拳銃である。

TT-1930

1920年代のソ連では、軍用拳銃として旧ロシア帝政時代からの制式拳銃である「ナガン・リボルバー」が用いられていた。しかし、ナガンは大きく重いうえ、ガス漏れ防止機構を備えるなどリボルバーとしては構造が複雑過ぎ、生産性の悪い旧式銃であった。またロシアには、第一次世界大戦中からロシア革命による戦後の内戦期にかけて、モーゼルC96やコルトM1911など各国から様々な種類・口径の拳銃が流入し、装備統一の面からも好ましくない混乱状況にあった。ソ連陸軍はこの問題に対処するため、1928年から軍用自動拳銃開発のトライアルを開始した。

F・V・トカレフは、帝政ロシア時代からの長いキャリアを持つ銃器設計者であった。彼はやはり帝政時代からの歴史がある名門兵器工場のトゥーラ造兵廠に所属していたが、このトライアルに応じ、1929年に自ら設計した自動拳銃を提出した。テストの結果、トカレフの自動拳銃は、外国製拳銃や、ブリルツキー、コロビンなどソ連国内のライバル拳銃を下し、1930年に「TT-1930」の制式名称で採用され、1935年まで生産された。

TT-1930の機構・デザイン

トカレフの設計した拳銃は、アメリカのコルトM1911(いわゆるコルト・ガバメント)のメカニズムを多く取り入れながら極限まで単純化を図ったものである。コルトの特徴であるショートリコイル撃発方式は、強力な弾丸を安全に発射でき、しかも比較的簡素なことから、多くの大型拳銃に模倣された。トカレフもこれを踏襲し、コルト同様に銃身全体をカバーする重いスライドを備えている。ただし、その外見はコルトM1903にそっくりである。直線形状のグリップは、やや握りにくいきらいがある。

多くの個別部品を極力一体化、また可能なら省略することで、部品点数と組立工数の削減を進めている。グリップはネジではなくレバーで留め、またハンマーからシア、ディスコネクタに至る最重要な機関部がアッセンブリー化されている等、生産性を高め、工具無しでもたやすく分解できるようにするための工夫がなされている。

自動拳銃の多くは、スライドの脱着時、スライド位置を固定する「スライドストッパー」を、側面に備えている。これは通常ならフレーム内側からパーツを充てて留められているものであるが、トカレフはスライドストッパーの軸をフレーム反対側まで貫通させ、露出した小さな板バネ状の割りピンで留めて、脱落を防ぐようにした。単純明快かつスマートなコスト・工数削減策で、これを模倣した拳銃も多い。

共産主義国家の軍用拳銃らしく、鋼板プレスの縦筋入りグリップ中央には、円で囲まれた星のマーク(☆)が入っている。これは共産圏国家でライセンス生産・コピー生産された多くのトカレフ系拳銃にも共通する外見的特徴となっている。スライド後部側面の指掛け部分は、細溝と太溝を交互に組み合わせたデザインで、グリップともどもいささか洗練を欠いて非常に泥臭い。これは厚い手袋をしたままでもスライドを引けるようにするためである。トリガーガードも、大柄なソ連兵士が革手袋を填めて射撃する状況を考慮して、かなり大きめに作られている。

使用弾

弾丸は、自動拳銃用の7.62mm×25弾(通称「.30モーゼル弾」。ただし、モーゼル弾では7.63mmと表記され、トカレフ弾と言うと7.62mmと表記される事が多い。同一の弾丸であるにもかかわらず、誤差が生じている理由は不明)を採用した。

開発当時、ソ連国内ではドイツ製の大型自動拳銃モーゼルC96が威力の強さを買われて多数使用されており、これに用いられる7.62mm×25弾(.30モーゼル・ピストル弾)を流用したものである。薬莢はライフル弾同様にくびれた「ボトルネック形」で、生産性はやや悪い。第二次世界大戦後はこの銃弾を使用する拳銃の元祖であるモーゼルC96の生産が終了されたため、7.62mm×25規格の拳銃弾はもっぱらトカレフ向けの弾丸として「7.62mmトカレフ弾」と呼ばれる事が多くなった。名称が変わっただけなので.30モーゼル・ピストル弾と7.62mmトカレフ弾は同じ弾薬で、相互の銃弾は両方で用いることができる。

7.62mm弾は弾頭が余り重くないので、射程距離はより大口径の銃弾に劣る。しかし口径の割に火薬の装薬量が多いため、初速がごく高い。またよく誤解されるのが、「7.62mm弾は貫通力に優れる」というものである。(ある実験の結果として、9x19mm弾は電話帳を2冊ほど貫通できるが、トカレフ弾はそれらと同等の電話帳を3冊貫通することができた。)

一般的な拳銃弾を防止できた防弾チョッキでも、貫徹弾であれば貫通されてしまう。この貫徹弾は材料費節約の意味もあって共産圏で多く出回っており、 1980年代以降中国製トカレフが日本国内に出回った際も、使われた弾のほとんどが貫徹弾であった。このことから、「トカレフ=貫通力が高い」というイメージが広まり、治安当局や防弾装備品メーカーは対策の強化を強いられた。

確かに多少は貫通力に秀でてはいるが、貫通力が高いのはあくまで弾頭の材質によるもので、7.62mm弾自体が大きい貫通力を持っている銃弾というわけではない。だがこれは通常弾の話で、スチールコア弾(貫徹弾)になると話は別である。もっとも、9x19mm弾を使用する銃であっても貫徹弾(またはKTW等)を発射すれば、防弾チョッキや鉄板などは軽く打ち抜いてしまう。

安全装置のない銃

トカレフ拳銃最大の特徴は、暴発を防止する安全装置の省略である。回転式拳銃には基本的に安全装置がなく、また、自動式拳銃で手動安全装置を省略している事例は少なからず存在するが、それらは黎明期の試行的な製品を除けば、弾丸を装填していても暴発するリスクが低い構造を備えているか、撃発機構に安全装置の一種とも言えるダブル・アクション機構を装備している。トカレフ拳銃はそれらと異なり、手動安全装置を装備していなければ暴発リスクを伴うシングル・アクション式の自動拳銃でありながら、安全装置と言える装備一切を省いていた。

TT-1930のベースになったコルト・ガバメントは、銃の側面にスイッチ状の「手動セフティレバー」を、またグリップ後面にはグリップを握っている時だけ発射を可能とする「グリップ・セフティ」をそれぞれ装備していた。コルトの設計をコピーした欧米の多くの銃器メーカーは、構造が複雑になるグリップ・セフティは省略しても、手動セフティは必ず装備した。民生用として市販するには安全上必須であったからである。

しかし、トカレフは敢えて手動セフティの省略にまで踏み切った。構造が単純になるので生産性が高まるメリットのほか、酷寒の季節に部品凍結等で発射不能になるリスクを少しでも減らす策でもあった。この設計は、訓練され、銃を暴発させないように扱える兵士等が使用する軍用専用であることを前提としており、民兵用としての安全性確保を考慮する必要がなかったことによる。ソビエト陸軍もこのような簡略構造を許容していた。

このため弾丸の装填中は、ハンマーをハーフ・コック状態にしておく以外に発射を防ぐ術はなかったが、それさえも確実な安全策とは言えず、不安なく銃を持ち運ぶには最初から弾丸を装填せずに薬室から抜いておくしかなかった。

現実には弾丸装填状態でなければ常用面で問題があり、結局「トカレフの暴発」は現在に至るまで多発している。さすがに危険過ぎるため、ハンガリーやユーゴスラビアで生産されたトカレフ派生型拳銃には後から手動セフティやマガジンセフティの追加が行われ、また中国製トカレフについても輸出型は手動セフティ装備となっている。

トカレフ拳銃のポリシーは、その後のソ連軍兵器の多くに受け継がれた。ソ連製の小火器類は、概して極度に単純化され、過酷な環境においても機能することを最優先とした構造を採るようになった。  

TT-1930/33

単純きわまりない設計のTT-1930を、ソ連軍当局は更に単純化するよう命令した。この結果開発されたのがTT-1930/33で、現在よく知られている多くのトカレフ拳銃はこのタイプの流れを汲むものである。酷寒の状況ではトリガー回りのパーツが凍結のために破損することもある。その際にパーツを素速く交換できるよう、トリガー関連のパーツ一体化等を図り、全体の部品点数も更に削減しているため、第二次世界大戦における各国の主力拳銃でも最も少ない部品で組み立てられている。また、照準を行うためのリアサイトを、TT-1930のV型から、より狙いやすく角張った凹型の「スクウェア・ノッチ」にしたのも重要な改善である。

運用

独ソ戦での実績

TT-1930/33は、洗練とはほど遠い武骨な銃であったが、1941年からの独ソ戦では意図した能力を発揮した。

ロシアの冬は極度の酷寒な気候となり、兵器も凍結によってしばしば作動しなくなる。また部品折損も多発した。ドイツ軍の拳銃であるルガーP08やワルサーP38は、高精度な工作で製造された優れた拳銃であったが、その精密さ故に酷寒の凍結には脆弱であった。これに対し、公差の許容度が大きく、仕上げの粗いトカレフは、トラブルも少なく確実に作動し折損部品交換も簡単であった。

ただし大戦中には資材不足から、鋼板グリップから木製グリップに変更した例も多い。またスライドの溝も工作簡易化のため、特徴的な太細交互配置から、ごく一般的な細溝のみの加工に変更されている。

第二次世界大戦後

1951年に、ワルサーPPの流れを汲んだ中型拳銃の「PM」(マカロフ拳銃)が新たにソ連軍に制式採用されたため、1953年にソ連でのTT-33の生産は終了、以後トカレフ拳銃はソ連においては二線級の存在となった。しかし、共産圏諸国においては1940年代後半以降ライセンス生産やコピー生産が盛んに行われ、各国独自の発展型(手動セフティの追加、銃弾の9mmパラベラム弾への変更など)も生み出されている。

中国

中華人民共和国では、1949年の建国後、ソ連から技術者を招いてトカレフ拳銃をはじめとするソ連製兵器の国産化に取り組んだ。その当初はソ連製パーツを利用したノックダウン生産から始まり、まず1951年にこのノックダウンモデルが51式拳銃(51式手槍)として採用され、折からの朝鮮戦争では中国人民志願軍や朝鮮人民軍に支給された。しかし、ほどなくソ連と中国の関係が悪化したため指導に来ていたソ連の技師は帰国、パーツ供給も途絶えた。そこで中国は既存の51式拳銃を元に自力によるトカレフ国産化を図り、1954年に純国産のトカレフを完成、54式拳銃(54式手槍)として中国人民解放軍が制式採用した。

54式拳銃はオリジナルのトカレフよりも銃口初速が速く、500m/sに達する。現在でも国営企業の中国北方工業公司(通称NORINCO)で製造され、アメリカなど海外市場の民間向けの輸出バージョンもある。正式な輸出型は、安全基準を満たすため手動セフティを追加しており、54-1式拳銃として区別されている。7.62mm仕様の他、西側諸国で主流の9mmパラベラム口径の213式拳銃もあり、こちらはスライドの指掛け溝が傾斜しているのが特徴である。材質はあまり良くなく、摩耗しやすいとされる。

日本に密輸されるトカレフは、NORINCO製54式拳銃の横流し品や規格外の不良品、ないし中国国内での密造品の類と見られている(大阪の領事館所属の駐在武官が関与した例が1991年にあることから、軍の廃銃の可能性も高い)。中国製の密輸トカレフにはしばしば全体をクロムメッキしたものが見られ、派手な外観を呈しているが、本来はメッキされるような性格の銃ではない。メッキの理由であるが、海路を使った密輸において銃が錆びることを防ぐという実用的な説がある一方で、日本の素人相手に粗悪な仕上げを誤魔化すことが現実の目的とも言われる。もともと共産圏の小火器には銃身内のメッキによってライフリングの長寿命化を図る事例が多いが、密輸トカレフの場合は、中古銃のライフリングが磨耗した銃身を鍍金することで、付け刃的延命処理を図ったとも見られる(日本でも旧陸軍の三八式歩兵銃などで同じような延命処置が取られていた)。暴力団関係者の間ではメッキされたトカレフに対して「銀ダラ」の通称が付けられている。他にも、グリップの色と星のマークから「黒星」の通称もあるが、通常のものを「黒星」、メッキされたものを「銀ダラ」と使い分けることが多い。

日本で不正入手できる拳銃の中でも中国製54式拳銃はいっとき代表的なものであったが、近年はマカロフや59式 (マカロフ PMの中国製コピー品) に主流を譲りつつある模様である。これらは暴力団によって使用されることが多いが、最近では一般人でも不法所持している事例が多く発覚しつつあり、水際での発見が望まれている。

北朝鮮

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は1968年までにトカレフの影響を受けた自動拳銃を開発し、68式拳銃として採用した。68式拳銃は、外観や使用弾丸などにトカレフの影響を強く受けており、手動セフティの省略や機関部の一体化などのトカレフと共通した構造を持つ一方で、銃身のロッキング機構はベルギー製のFN ブローニング・ハイパワーに近いティルト・バレル構造で、その点トカレフの直系とは言い難い。

朝鮮人民軍や警察に広範に配備されており、現在も広く用いられていると考えられている。しかし、慢性的な物資・食糧不足で軍規が緩んだ近年の北朝鮮では、軍や警察から銃器が盗まれる事件が急増しており、首都平壌の中央銀行では盗んだ68式拳銃を使った強盗事件も発生した。なお、68式拳銃の名称は北朝鮮正式の名称ではないという説もあり、韓国軍が鹵獲した68式拳銃の中には1966年製と刻印の入ったものも存在する。

性能

口径 7.62mm×25
銃身長 115mm
ライフリング 4条/右回り
使用弾薬 7.62mmトカレフ弾
装弾数 8発
作動方式 シングルアクション
      ショートリコイル
全長 196mm
重量 854g(弾倉有)
    815g(弾倉無)
銃口初速 420m/s
       54式:500m/s
有効射程 50m

さらに詳しく → トカレフTT-33



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宮崎 学

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