アメリカ陸軍主力攻撃ヘリ 【アパッチ(Apache)】 - その性能と歴史に迫る

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2010/07/30(金)
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AH-64D アパッチ・ロングボウ(AH-64D Apache Longbow)は、マクドネル・ダグラス社(現ボーイング)が開発したAH-64A アパッチにロングボウ火器管制レーダーを搭載し、大幅な能力向上を図ったAH-64の派生型。アメリカ陸軍の他、日本の陸上自衛隊でも採用されている。

開発経緯

第2世代アパッチ開発計画

1986年7月に初度作戦能力を獲得したAH-64A アパッチは、アメリカ軍の数々の作戦に投入されてその威力を発揮し、世界最強の攻撃ヘリコプターであることを知らしめた。ただ、進化が予想される将来の戦場シナリオに対応するための改良・発達が不可欠とされ、マクドネル・ダグラス社は1990年の湾岸危機直後に第2世代アパッチ開発計画に着手した。この計画はAH-64Aに全地球測位システム(GPS)、地上・空中単一チャンネル無線システム(SINCGARS)、自動火器管制システムと目標引き渡し機能などを備え、新しいローター・ブレードの装備を含めた信頼性の向上を行うもので、AH-64Bの名称が与えられ、254機のAH-64AをAH-64Bに改修する計画が立てられた。しかし、1990年8月にアメリカ国防調達委員会はもう一つの改修計画である、AH-64C/D計画を承認。これにより、AH-64B計画は実現しなかった。

このAH-64C/D計画は、AN/APG-78ロングボウ火器管制レーダー(FCR)システムを装備し、AH-64B計画での改修点に加え、無線周波(RF)ヘルファイア対戦車ミサイルの携行能力、ドップラー航法装置の装備、アビオニクスの小型化、コクピットの改善を行うもので、ミリ波レーダー搭載型をAH-64D、ミリ波レーダー非搭載型をAH-64Cと呼称した。1990年12月からAH-64C/Dへの改修作業が開始され、ヘルファイア対戦車ミサイルの開発に間に合わせるために当初の51ヶ月から延長して70ヶ月の全規模開発プログラムがスタートした。1993年末にはAH-64Cの呼称が廃止され、ミリ波レーダー搭載の如何に関わらず、改修機全機をAH-64D アパッチ・ロングボウと呼称することが決定された。

AH-64Dの開発

アメリカ陸軍が装備するAH-64Dは全機、既存のAH-64Aからの改修機とし、全規模開発プログラムに基づいてまず、AH-64Aの量産2号機がAH-64D空力試作改造初号機となり、ダミーのロングボウ・レドームを装備して1991年3月11日に初飛行した。これに続いて試作改造機4機と先行量産改造機2機が製造されている。試作改造初号機は1992年4月15日、2号機は1992年11月13日に初飛行し、空力試験の後、1993年中頃にロングボウ・レーダーが装備されて1993年8月20日に進空した。

AH-64Dへの量産改修については、1995年12月に先行調達段階の契約が結ばれ、1996年8月16日にアメリカ陸軍とマクドネルダグラス社が今後5年間で232機を改造する多年度再生産契約を結んでいる。この契約ではまず、初年度に24機の再生産機を納入し、232機全機を2001年第1四半期までに完納することとされた。アメリカ陸軍では、保有する758機の全AH-64AをAH-64Dに改修し、ロングボウ・レーダー搭載機は227機にする計画を立てた。しかし、その後の試験評価などからAH-64Dへの改修機数を501機に削減し、ほぼ全機にロングボウ・レーダーを搭載する方針に変更している。

AH-64Dのアメリカ陸軍向け初期引き渡し機はブロックIと呼ばれ、最初の284機がこの仕様である。続く313機がブロックIIと呼ばれるもので、2002年2月25日に初号機がアメリカ陸軍へ引き渡された。ブロックIIは、アメリカ陸軍の戦術級C4IシステムであるFBCB2に対応する通信機能を備えたもので、SINCGARSやAN/TSQ-158強化型位置評定報告システム(EPLRS)との接続を可能にしている。アメリカ陸軍では、ブロックI/IIをブロックIII仕様にアップグレードすることを計画している。ブロックIIIでは、ワイドバンド通信機能の装備、ロングボウ・レーダーおよびミサイル兵装の能力拡張、レベルIVの無人機制御能力、センサー融合技術の導入などを行う。加えてエンジンも耐久性と出力を高めることが検討されている。ブロックIII仕様機の予算化は2009会計年度が予定されている。

機体構成

機体

AH-64DのコクピットはAH-64Aから完全に一新され、マンプリント型と呼ばれる。前後席には従来の計器類に代わって15×15cmの単色 CRT表示装置を2基装備し、乗員のワークロードは大幅に減少した。CRT表示装置には、基本飛行情報のほか、戦術状況表示、エンジンやシステム状況表示、兵装状況表示、レーダー情報表示などを乗員の選択により行うことができ、2基のCRT表示装置には完全な互換性がある。

また、戦闘管理/連携攻撃/状況認識能力が改善されており、シメトリックス・インダストリーズ製改良型データ・モデム(IDM)を装備する。このモデムは、毎秒16KBという高速データ転送機能を有しており、行動中の地上部隊、あるいは他の作戦ヘリコプター、火力チーム、E-8 J-STARS等と各種データのやりとりを行う。これにより、情報交換や目標の引き渡し/引き受け等が可能になり、統合化された空地戦を実現できる。

AH-64DのIDMで転送できるデータとしては、座標データ、FCR目標データ、戦闘損害評価(BDA)、射撃ゾーン等で、こうした情報のやりとりは運用の互換性、デジタル通信、4チャンネル運用、耐妨害性、秘匿性、各種無線機、戦術火力指揮システムの使用といった特徴を有する。

AN/APG-78 ロングボウ・レーダー

AN/APG-78ロングボウ・レーダーは、ミリメートル波を使ったレーダーで、目標の発見や捕捉/照準に加えて低迎撃可能性(LPI)を有するように設計されている。レーダー自体は、AH-64Dの主ローター・マスト頂部の円盤形ドームに収められていて、空対空モードでは360度の捜索能力を有し、1回の360度全周走査は30秒以内で行われる。また空対地モードでは、一つの走査セクター(区域)は90度で、それを3セクター有し、機体前方270度の範囲内で走査する。この他、地形プロファイリング機能も有する。

ロングボウ・レーダーは戦車や空中部隊などを迅速に探知・識別して位置を特定し、攻撃のための優先順位付けを行える。空対地モードでは、地上目標に加えて空中目標の探知も可能たが、空対空モードでは地上目標の探知能力はない。レーダー・アンテナの走査で把握された目標は機上プロセッサーが、精密な位置評定、移動速度、移動方向等の情報処理を行う。この作業は同時に最大256目標に対して行え、それぞれの目標の種別を特定することも可能である。さらにこれら探知目標について、脅威の度合いを判定して自動的に対処優先順位を付けて目標リストを作成する機能も有している。加えて、空対地モードでは優先射撃ゾーン(PFZ)を設定し、そのゾーン内のみの目標に関する優先順位付けも行える。優先順位付けされた目標は、優先度の高いものから順に最大で 16目標がコクピットの多機能表示装置に表示される。

ロングボウ・レーダーの基部にはAN/APR-48A レーダー周波干渉装置(RFI)のセンサーが付いており、AH-64Dが地形等の陰に完全に隠れる前に受動方式で敵防空システムのレーダー輻射を捉え、その情報はFCRが優先順位付けをし、AGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイルへ渡される。FCRの捜索処理による目標に対するキュー化は完全に自動化されており、AH-64Dが地形などの陰に隠れた後でも作動している敵防空システム存在下で、乗員による反応時間の最短化を実現できる。360度の脅威警報・識別能力を有するとともに、FCRの照準線に準拠した最大90度の範囲で射撃方向判定が行える。干渉装置のアンテナ・アレイは、FCRアンテナとともにボアサイト化されているのでRFIによる探知は高い精度でFCRの目標情報と一体化される。脅威特性では、最大100のレーダー輻射をプログラム化でき、内蔵データとの照合で輻射源の機材等の特定化が行える。このプログラムは、取り外し可能型の 使用者データ・モジュール(UDM)に収められており、新たな脅威が出現した場合でもユーザーが容易にアップデートできるシステムとなっている。

アローヘッド

アローヘッドは陸上自衛隊向けのAH-64Dに搭載されている新世代の赤外線技術を使ったセンサーで、操縦用センサー、画像増強装置(I2)、目標指示前方監視赤外線(FLIR)、昼間センサー(昼間テレビ、レーザー照射装置、レーザー追跡装置)で構成されている。これらの内、FLIRを使った操縦センサーとI2によるテレビ・システム(I2TV)が発達型操縦センサー(APS)を構成し、それ以外のものが発達型目標指示センサー(ATS)となっている。

アローヘッドの大きな特徴の一つは高画質のFLIR画像が得られることであり、1,000~10,000,000ピクセルという極めて大きなフォーカル・プレーン・アレイを有し、その走査画像をアナログ/デジタル変換をチップ上で行うことによって高解像度の画像を得られる。アローヘッドは多数の列線交換可能モジュール(LRM)と列線交換可能ユニット(LRU)で構成されているため、不具合や故障が生じてもモジュール化ユニットをそのまま交換するだけで機体を作戦状態に戻すことが可能であり、高い作戦稼働率を維持することができる。また、LRMの使用によって戦闘環境や電磁干渉に対しても高い抵抗力を有するようになっている。

派生型

* AH-64D アパッチ・ロングボウ:ロングボウ・レーダー搭載型
* AH-64DN アパッチ:オランダ空軍向け生産型(ロングボウ・レーダー非装備)
* WAH-64 アパッチ:イギリス陸軍向け生産型(イギリス陸軍内での呼称はアパッチAH.1)

性能諸元

メインローター直径:14.63m
全長:17.76m
全高:4.95m(FCR頂部まで)
回転円盤面積:168.1m²
空虚重量:5,352kg
設計ミッション総重量:8,006kg
最大離陸重量:10,107kg
GE製 T700-GE-701C ターボシャフト・エンジン×2
エンジン推力:1409kW
超過禁止速度:197kt
水平速度:141kt
海面上昇率:474m/min
ホバリング高度限界:4,115m(地形効果内)/2,990m(地形効果外)
航続距離:220nm(機内燃料のみ)/1,024nm(フェリー時)
 乗員:2名(前席:射撃手兼副操縦士/後席:操縦士)
固定武装:M230A1 30mm機関砲×1

さらに詳しく → AH-64D アパッチ・ロングボウ  AH-64 アパッチ



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(2009/12/17)
坪田 敦史

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