「慰安婦決議」は如何にして決議されるか?

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2010/07/20(火)
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慰安婦(いあんふ)とは、日中戦争、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争及び韓米軍事合同訓練並びにアメリカ軍、連合国軍及び国連軍の駐留時などに、当時の戦地、訓練地、駐留アメリカ軍基地周辺の基地村(기지촌)などに設置された慰安所と呼ばれた施設で日本軍や韓国軍やアメリカ軍や国連軍の軍人に対して、性的サービスを行っていた女性の総称。

概観

制度としての慰安婦は、軍相手の「管理売春」という商行為をおこなう存在であり、慰安婦には報酬が支払われていたが、過酷な性労働を強いた性的な奴隷に等しいとする主張もある。日本のケースでは民間業者が新聞広告などで広く募集するなどして日本人女性以外からも慰安婦を採用していたが、慰安婦を強制連行したか否か、強制的なものであったかなどの点について論争がおこなわれている。

1983 年に吉田清治が済州島で「慰安婦狩り」を自ら行ったとする「私の戦争犯罪―朝鮮人強制連行」を出版。1989年に韓国でも出版され、同年中に済州島新聞や済州島郷土史家の金奉玉によって虚偽であることが判明したが、「朝鮮と朝鮮人に公式謝罪を・百人委員会」事務局長青柳敦子と在日朝鮮人宋斗会が韓国で謝罪と補償を求める訴訟の原告を募い、吉田は韓国に渡り、謝罪碑建立と謝罪活動を始めた。

1992 年、朝日新聞や韓国メディアは宮沢喜一首相の訪韓を前にして、吉田の証言や韓国謝罪行脚を連日掲載し、宮沢の訪韓はデモ隊が待ち受けるなかで行われた。宮沢は事実関係の調査を経ることなく何度も謝罪の発言を行った。同年、日本の歴史家秦郁彦による現地調査でも強制連行が虚偽であることが確認された。1993年、韓国政府は日本政府に日本の教科書に慰安婦について記述するよう要求し、全ての高校教科書に従軍慰安婦として記載されることとなった。同年、日本政府は韓国政府に強制性を認めるよう要求され、関係資料を調査した結果、「強制連行を行ったという資料は発見されなかった」「日本政府が強制したということは認めたわけではない」が、河野洋平内閣官房長官の政治決断によって、「日常生活に強制性が見られた」と解釈することで、日本軍の要請を受けた業者によって女性が意志に反して集められ、官憲が直接加担したこともあったとする河野談話が発表され、現在にいたるまで深刻な外交・教育問題となるようになった(河野談話が国内外から出される対日非難決議の根拠とされることとなる)。1994年には永野茂門法務大臣が「慰安婦は公娼である」と述べたことで辞任に追い込まれた。

吉田は自著の虚偽を指摘された後も韓国での謝罪行脚や朝日新聞での証言を続けていたが、1995年に「自分の役目は終わった」として著書が自身の創作であったことを認め、朝日新聞は1997 年に「吉田証言の真偽は確認できない」との記事を掲載した。2007年に安倍晋三首相は「虚偽と判明した吉田証言以外に官憲の関与の証言はない」と答弁している。

国連人権委員会には日本カトリック教団が積極的なロビー活動を行い、1996年にクマラスワミ報告書、1998年にマクドゥーガル報告書が提出されるに至り、白柳誠一枢機卿は日本政府に謝罪と補償を求める論文をカトリック新聞で発表するとともに「応じよ!国連勧告」100万人署名運動を呼びかけた。2000年に朝日新聞元編集委員の松井やよりが主催する「戦争と女性への暴力」日本ネットワークや韓国挺身隊問題対策協議会などの団体によって「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」が開かれた。「法廷」では「昭和天皇および日本国は有罪」との「判決」が下され、取材をおこなった海外のメディアが「日本国が女性を強制連行して性奴隷にした」と報じたことで慰安婦問題は世界各国でも認識されるようになった。

慰安所営業者の半数は朝鮮人であり、日本軍は誇大広告を禁止するとともに渡航する女性が本人自ら警察署で身分証明書の発給を受けて誘拐でないことを確認するよう通達を出し、朝鮮では日本の官憲が日本人や朝鮮人の女性を誘拐して売買をおこなったものを取り締まっていたが、河野談話以降は海外から「日本政府が数十万人の女性を強制連行して性奴隷にした」として非難され、日本国内では女性の人権などの観点をめぐって様々な議論となっている。

韓国のケースでは韓国政府やアメリカ政府による強制があったとされている。朝鮮戦争中に韓国軍に逮捕された北朝鮮人女性は強制的に慰安婦にされることもあった。さらに韓国軍の北派工作員は北朝鮮で拉致と強姦により慰安婦をおいていた。少なくとも1980年代までは韓国人女性達はアメリカ軍相手の売春を韓国政府やアメリカ人により強制されていた。韓国人女性達への強制が終わると、ロシア人女性やフィリピン人女性達が代わりとなった。1990年代以降の韓国では、アメリカ軍基地の近くで韓国人業者によりフィリピン人女性達が売春を強制されている。 1990年代中ごろから2002年までに5000人のロシア人やフィリピン人女性達が密入国させられた上で売春を強制させられていた。2000年代の韓国では、韓国軍相手の女性達の90%がロシア人やフィリピン人女性などの外国人であるとされている。2009年現在のアメリカ軍基地近接地で売春を強制させられている女性に占めるロシア人女性の比率は減少しているがフィリピン人女性の比率は増加している。なお、韓国では売春は違法行為である。

日本政府としては、1951年9月 8日に連合国諸国とサンフランシスコ講和条約を締結し、関係諸国との2国間条約を締結し請求権問題を解決した。1965年6 月22日には韓国と財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定を締結し、1000億円以上を支払うとともに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたこととなることを韓国政府とともに確認した。近年では、1994 年8月31日に村山富市内閣総理大臣が元慰安婦に対しておわびの談話を出している。また、1996 年には橋本龍太郎内閣総理大臣は元慰安婦(アジア女性基金が対象としていない日本人女性を除く)に対しておわびの手紙を出している。同時に、サンフランシスコ講和条約、二国間の平和条約及び諸条約(日韓基本条約など)で法的に解決済みであることを明らかにしているが、女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるとの認識のもと、道義的責任の観点から、アジア女性基金の事業への協力、日本人女性を除く元慰安婦に対する医療・福祉支援事業に対し資金拠出などを行った。 1997年1月よりアジア女性基金は償い金の給付と医療福祉援助を行い、韓国人、台湾人、オランダ人、フィリピン人女性などが受給した。いずれの談話も慰安婦という職業の存在を認め名誉を傷つけたとはしているが強制連行などをしたとの見解は表明していない。

韓国では、1997年に11名の元日本軍慰安婦がアジア女性基金による償い金を受領したが、1998年に韓国政府はアジア女性基金の償い金の受け取りは認めない方針を示した。これに対して日本側は医療施設建設など事業転換を提案したが、1999年6月に韓国政府は改めて拒否を通告した。これにより、韓国政府はアジア女性基金による償い金受けとらないと誓約した元日本軍慰安婦には生活支援金を支給することとし、韓国政府認定日本軍慰安婦 207人のうち、アジア女性基金から受給した元慰安婦や既に亡くなったものを除く142人に生活支援金の支給を実施している。一方、アメリカ軍相手の売春を強制されていた女性達は謝罪と補償を求めているが、自発的な売春婦であるとして一切の謝罪・補償をおこなっていない。アメリカ軍相手の売春を韓国政府やアメリカ人により強制されていた女性達は韓国政府の日本に対する絶え間ない賠償要求は韓国自身の歴史に対する欺瞞であると訴えている。フィリピン政府としては売春を強制されたフィリピン女性のために韓国で訴訟活動を行っている。 2000年代以降、韓国挺身隊問題対策協議会や韓国政府主催の世界韓民族女性ネットワークは日本軍慰安婦への謝罪と賠償を求める活動を世界各地でおこなっている。日本からは民主党の国会議員が韓国でのデモに合流している。

2007 年7月30日、アメリカ合衆国議会は「日本政府によって日本軍のために、いまだかつてないほどの残酷さと規模であった20 世紀最大の人身売買の1つである」とし、「性奴隷にされた慰安婦とされる女性達への公式な謝罪、歴史的責任、あらゆる異論に対する明確な論破及び将来の世代にわたっての教育をすることを日本政府に要求する」としたアメリカ合衆国下院121号決議を採択した。この採択は、在米韓国人によってアメリカ合衆国各地に慰安婦謝罪決議案採択のための汎対策委員会が設立され、旧日本軍慰安婦謝罪要求決議が可決されるよう韓国系アメリカ人によるアメリカ下院議員へのロビー活動の成果であり、日本政府の不決議へのロビー活動は失敗し多くの禍根を残した。この成功を受けて、韓国挺身隊問題対策協議会はヨーロッパやアジア各国で旧日本軍慰安婦謝罪要求決議がなされるよう運動を呼びかけた。9 月20日にオーストラリア上院慰安婦問題和解提言決議、11月20日にオランダ下院慰安婦問題謝罪要求決議、11月28日にカナダ下院慰安婦問題謝罪要求決議、12月13日に欧州連合(European Union)の欧州議会本会議、2008年3 月11日にフィリピン下院外交委、10月27日に韓国国会は謝罪と賠償、歴史教科書記載などを求める決議採択、11月11日に台湾の立法院(国会)が日本政府による公式謝罪と被害者への賠償を求める決議案を全会一致で採択されるなど、サンフランシスコ講和条約締結国から次々に日本のみを対象とする決議が出されている。これらの諸国は朝鮮戦争に国連軍としても参加している。軍事裁判や講和条約でその責任や賠償は終わっている、サンフランシスコ講和条約以前のことを持ち出すことは国際法違反であると指摘されている。アルジャジーラは、「アメリカ合衆国は日本と中国・韓国との間に問題を作り出そうとしている」と報じている。 2009年に入ると日本に謝罪を要求する国連決議が可決されるようアメリカ合衆国下院議員やナヌムの家が活動を行っており、韓国政府はこれらの動きについて「評価する」と表明している。アメリカ合衆国では日本軍の慰安婦を対象とした「慰安婦記念碑」を「ユダヤ人虐殺記念碑」と同等とみなして全米各地で建立する運動が韓国人によって行われており、図書館などの公共施設の入り口に設置することが許可されている。 2009年9月現在、アメリカ合衆国議会によって、日本政府に謝罪を求めるとした国連決議がなされるよう働きかけが行われている。

日本国内では、アメリカ合衆国による謝罪要求決議を受けて、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞、毎日新聞は決議を非難する報道を行ったが、朝日新聞は安倍晋三首相は河野談話と同様の談話を再度出すべきであると報じた。2007年8 月29日、在日本大韓民国民団の機関誌民団新聞が旧日本軍慰安婦謝罪要求決議がアメリカに続けて世界各国で決議されるように活動することを呼びかける論文を掲載する。「慰安婦」問題に対して日本政府が誠実な対応をするよう求めるとした意見書を、2008年3 月28日に兵庫県宝塚市議会が採択したのを始めとして2010年6月までに民主、公明、共産系が多数を占める25の市議会で採択されており、2009年に民主党が政権獲得後に増加している。民主党らによって日本人女性を除く元日本軍慰安婦に対して新たな謝罪と補償と戦時性的強制被害者という新たな呼称を定めるための戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案が提出されており、政権獲得後に実現させるとしている。

在日特権を許さない市民の会や主権回復を目指す会などの「保守系住民団体」は、「日本軍の従軍慰安婦への謝罪と補償」を要求している団体と激しく対立している。また、「違法な形でデモや集会をおこなっていることを警察が黙認している」と抗議し、警察側が抗議に応じてデモを解散させたこともある。

2005 年8月に 1965年当時の日韓交渉に関する文書が公開されると、韓国政府は「結ばれた協定には反人道的違法行為は含まない」と発表した。2009年8 月14日、ソウル行政裁判所は「1965年に締結された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定により日本政府から無償で支給された3億ドル(1965年当時のレートで1080億円)で徴用者への未払い賃金への対日請求が完結しており、大韓民国外交通商部としては、すでに補償は解決済み」としたが、2010年3 月15日に、慰安婦については「1965年の対日請求の対象外」として「日本政府の法的責任を追及し、誠意ある措置を取るよう促している」と発表した。同年3月17日、日本政府は改めて「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定により、両国間における請求権は、完全かつ最終的に解決されている」とする見解を発表した。2010年4 月28日、フィリピン最高裁は、フィリピン政府に日本政府への謝罪要求を支持するよう求める訴えを退けた。

さらに詳しく → 慰安婦



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(2007/06/22)
西岡 力

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