10式戦車(Type-10 Tank)

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2010/07/14(水)
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概要

陸上自衛隊の戦後4 代目となる主力戦車。開発は防衛省技術研究本部、試作・生産は三菱重工業が担当した。2009年12月に「10 式」と命名され、制式化された。日本製鋼所の44口径の120mm滑腔砲を搭載し、日本戦車としては初めてC4Iシステムを有する。また、90式戦車と同様に自動装填装置の採用によって乗員は3名となっている。 全国的な配備を目指し、90式戦車に比べ車体の軽量化が達成されている。2010年度より調達が開始され、初年度調達分は富士教導団戦車教導隊に配備が予定されている。

開発経緯

日本を防衛するための能力を将来にわたって維持するため、将来戦に対応できる機能・性能を有した現有戦車の後継が必要とされた。導入する戦車の条件として、C4Iシステムによる情報共有および指揮統制能力の付加、火力・防護力・機動力の向上、全国的な配備と戦略機動のための小型軽量化が求められた。

現有戦車の改修や、諸外国で装備されている戦車の導入も検討されたが、防衛省の政策評価書によれば次のような理由から不適当であるとされた。

* 現有の74式戦車および90式戦車を改修する場合、C4Iシステムを付加するには内部スペースが足りず、設計が古いことから将来戦に求められる性能が総合的に不足する。
* 諸外国の第3.5世代戦車を導入する場合、いずれも90式戦車より大型で重量が約6-12t重い上、陸上自衛隊でそのまま利活用できるC4Iシステムを搭載しておらず、独自のC4Iに適合させるための改修が必要である。

以上の理由から既存の戦車の改修によって目標を達成することは困難であり、将来の各種任務に必要な性能を満たす戦車を装備するためには新戦車の開発を行うことが適当と判断された。

2002 年(平成14年)度に開発が開始された。開発を担当したのは防衛省技術研究本部の技術開発官(陸上担当)、試作・生産は主契約企業の三菱重工業である。試作は平成14年度から2008年(平成20年)度にかけて、試験は2007年(平成19年)度から2009年(平成21年)度にかけて実施された。

2008 年2月13日、神奈川県相模原市の技術研究本部陸上装備研究所で試作車両が初めて報道公開された。また、同時に主な諸元、砲塔内の一部を撮影した写真、走行・射撃映像なども報道向けに公開された。記者会見では価格についての質問があり、担当者から希望的なニュアンスで7億円との回答があったとされる。試作車両の車体後部左側面の銘板には「新戦車(その5)戦車(その2)戦車2号車」と書かれており、複数の雑誌で2008年1月に完成した試作2号車と記述していた。この1輌を含め、4輌の試作車で実用試験が行われた。

2010 年(平成22年)6月14日には、静岡県小山町の陸上自衛隊富士学校で試作車両が実際に走行する様子が報道関係者に公開された。2010年度から調達を開始し、2011 年(平成23年)度より取得が開始される。

仕様

火力・防護力・機動力などの性能は、90式戦車と同等かそれ以上を目標としている。乗員は車長、砲手、操縦手の3名。

将来の対機甲戦闘および機甲打撃を行いうる性能と、ゲリラコマンド攻撃の対処における優位を確立するため、以下を開発のコンセプトとしている。

* 高度なC4I機能等の付加
* 火力・防護力・機動力の向上
* 全国的な配備に適した小型軽量化
* 民生品の活用 (COTS) および部品の共通化等によるライフサイクルコストを含む経費の抑制
* 将来の技術革新等による能力向上に対応するための拡張性の確保

火力

火砲・弾薬

主砲は新開発された軽量高腔圧砲身の日本製鋼所製の国産44口径120mm滑腔砲を装備、砲弾は発射薬や飛翔体構造を最適化した国産の新型徹甲弾が開発され、弾丸の高威力化を達成している。将来的に必要であれば55口径120mm戦車砲に換装可能なように設計されている。また、新戦車の開発においては90式戦車で使われる120mm戦車砲弾の転用・使用を考慮している。主砲を構成する一部の部品にラインメタルからライセンスされた技術が使用され、 90式戦車の主砲弾も使用できるとされている。

現状の90式戦車と同等の威力を持つ砲を搭載した場合、50t程度の車重がなければ反動を押さえ込めず、射撃の精度が保てないとされていたが、10 式戦車ではアクティブサスペンション(もしくはセミアクティブサスペンション)の制御により発砲時の動揺を押さえ込むことで対処している。公開されている試作車両の射撃映像における射撃後の動揺の収まりは90式戦車より速い。

副武装として主砲同軸に74式車載7.62mm機関銃、砲塔上面には12.7mm重機関銃M2を装備している。90式戦車と異なる点として、防盾右半分の面積が小さくなっている。また、12.7mm重機関銃M2用の銃架は、車長用潜望鏡上部にある円形のレールに取り付けられ旋回させられる。

自動装填装置

自動装填装置を装備し、砲塔後部バスル内にベルト式の給弾装置を配置しているとされる。戦車用自動装填装置の多くは装填時の角度が決まっており、装填のたびに主砲をその角度に戻す形式だが、新戦車の自動装填装置は主砲にある程度の仰俯角がかかっていても装填が可能とされ、装填時間の短縮を図っている。また、砲塔後面には円形のハッチがあり、そこから自動装填装置への給弾ができるとされている。

砲弾の搭載弾数については、自動装填装置内で「現時点で14発」とする記事や、砲塔弾庫に14発、砲手の後方に2発、車体に6発の計22発が収納できるとする記事のほか、90式戦車と殆ど変わらないという記事があり、こちらでは90式戦車は自動装填装置内と車体内に各18発と戦闘室内に4発の計40発が搭載可能と記述している。

指揮・射撃統制装置

指揮・射撃統制装置に関しては走行中も主砲の照準を自動的にセットする自動追尾機能があり、タッチパネル操作でも主砲の発砲が可能とされる。新戦車の試験項目には、直進及びスラロームの走行状態を模擬した加振を新戦車模擬砲塔部に与え、射撃統制誤差に関するデータを取得する性能確認試験の内容がある。

車長用潜望鏡後方の高い位置に設置された、車長用視察照準装置の赤外線カメラ部は全周旋回可能、C4Iによる情報の共有などもあり、味方と連携して索敵、攻撃を行うハンターキラー能力は90式戦車と比べて向上しているとされる。

2008年2月の試作車両の報道公開に際し、砲塔上面から砲塔内部の視察が行われたほか、車長席と砲手席のモニタおよび操作パネル周りの写真も公開された。写真には砲手席に直接照準眼鏡と砲手用潜望鏡が写っているが、この写真が報道公開された車両のものかは明らかでない。

防護力

直接防護力

防護力に関しては、新たに複合装甲を開発し、防御力を下げることなく軽量化を図っている。90式戦車に採用されている複合装甲が開発されてから 20年近く経過した現在、当時と同じ材質を用いた場合70%、最新の理論と素材を用いた場合30%の重量で90式戦車と同じ防御能力が得られるとの意見がある。

平成18年度に公表された防衛省技術研究本部のウェブサイト内の資料である「公共調達の適正化について(平成18年8月25日付財計第2017 号)に基づく随意契約に係る情報の公表(物品役務等)」には、岐阜県の神岡出張所にて実施される正面要部耐弾性試験に関する内容が記載されている。これによると新型試作砲である120mm架台砲IV型、そして新型試作砲弾である徹甲弾IV型を用いること、それらを用いた射距離250mの射撃により砲塔正面左右及び車体正面モジュール型装甲の耐弾性評価を実施するとされる。公開された試作車両は、炭素繊維やセラミックスの装甲板への使用や、小型化などにより、全備重量は90式戦車より約12%ほど軽量になったとされる。

正面要部(砲塔・車体正面)には90式戦車と同じく複合装甲が組み込まれており、これが新戦車のモジュール型装甲であるとされる。複合装甲モジュールの実装方式には内装式と外装式があるとされ、90式戦車は内装式であると言われているが、新戦車の場合は明らかにされていない。ただ、車体正面については90式戦車と同じく筐体正面が露出していることから内装式と見られる。

試作車両の正面要部には、複数本のボルトで固定された装甲板が確認できる。砲塔部の装甲板は先端が楔形であり空間装甲としての効果などがあると考えられている。また、操縦手用ハッチ上方の一部の部分は内側に引き込まれる形で垂直になっており、この垂直部分を隔てた更に奥に複合装甲からなる主装甲が存在する。車体部の装甲板の内側には前照灯が確認できる。砲塔部・車体部どちらの装甲板も、90式戦車のキャンバスカバーのように正面要部を覆うようにボルトで取り付けられている。

報道公開された試作車両の、砲塔本体の両側面には分割式の増加装甲が装着されており、公開映像ではこれが取り外された状態で走行・射撃試験が行われている。この増加装甲は空間装甲とバスケットを兼ねた物で、必要に応じて内部に装甲を追加するという見方があり、歩兵用携帯対戦車火器による攻撃からの対処を考慮したものではないかと報じられた。防衛省技術研究本部のウェブサイトで公開されている写真などから、増加装甲は砲塔後部のバスケットと同様に砲塔本体に対して水平方向にボルト止めされることが窺える。全備重量は基本40t/通常44t/最大48tとする説や、増加装甲を最大限取り付けると全備重量が48t、公開された試作車両が44tと記述する説がある。

間接防護力

砲塔側面前方には発煙弾発射装置が取り付けられている。なお、90式戦車の発煙弾発射装置はレーザー検知装置と連動するようになっており、新戦車も同様の機能を有している考えられる。既存の戦車には見られなかった新戦車の特徴として、全周囲を走査可能なよう砲塔の四隅に配置されたセンシング装置がある。詳細な性能については非公開だが、レーザー検知器と、MEMS技術を用いた赤外線イメージセンサ、パッシブ方式のミリ波レーダー検知器とする説がある。また、新戦車の車両構造は対IR化のため最適化され、IRステルス性が向上しているとされる。

車体側面、鋼製スカートの下にあるゴム製スカートはステルスを目的としている。

機動力

戦術機動性

2005 年(平成17年)10月25日に防衛省技術研究本部のサイト内に新設された「外部評価委員会 評価結果の概要」は、新戦車のエンジンは「90式戦車と同等あるいはそれ以上の機動性能を実現可能な、新戦車用動力装置(エンジン、冷却装置および変速装置)」を目的とした試作がなされ、

* 4サイクル水冷ディーゼルエンジン
* 可変ノズル排気ターボ過給装置方式
* 電子制御式ユニットインジェクタ方式
* 90°V型8気筒

の4点が試作品の基本設計結果としている。 この新戦車用機関の設計について外部評価委員会は「動力装置の設計は、現時点での最新技術を導入した正攻法なものと考えられる」とまとめている。

実際に試作車両のエンジンは水冷4サイクル8気筒ディーゼルで1200馬力と発表された。61式戦車以来となる4サイクルディーゼル機関を搭載し、燃費向上や黒煙低減などが図られている。出力重量比は約27ps/tで、90式戦車の約30ps/tと比べれば若干低いが、出力1500ps重量55tの戦車とほぼ同等である。また、変速操向装置には油圧機械式無段階自動変速操向機 (HMT, Hydro-Mechanical Transmission) を採用しており、車両質量当りのスプロケット(起動輪)出力は現有戦車に対して格段に向上しているため、機動力はむしろ向上しているとされる。また、90式戦車の半分の半径で旋回が可能という。エンジンの燃費に関しては90式戦車と比べ省燃費となり、携行燃料は90式戦車の1100リットルから880リットルに減少しているとされ、これによるタンク容積の節約も車体の小型・軽量化に寄与しているとされる。

懸架装置は、74式戦車と同じく、全転輪が油気圧式のアクティブサスペンション(セミアクティブサスペンションとする説もある)を装備する。このため、90式戦車では省略されていた左右への車体傾斜機能が復活しており、走行性能と砲安定性能が向上している。また、転輪の数は片側5個の等間隔となり、 90式戦車の6個より減少している。

操縦手席の様子は公開されていないが、操縦手用ハッチはスライド式とされ、試作車両の車体の前面と後面には、操縦手用潜望鏡とは別に操縦手用の視察装置があり、操縦手はモニタを見ながら操縦するとされている。また、2007年に当時の技術研究本部長がMAMORのインタビューで、今までメーター型だった計器をフラットパネル化する予定であると述べている。新型履帯(キャタピラ)の採用により、一定速度で走行する場合に履帯が進行方向にすべる現象(前すべり現象)を抑えている。

戦略機動性

現時点での最新戦車である90式戦車は北海道での運用を考慮して開発されたため、重量が約50tあり北海道以外での平時における配備・運用が難しいとされている。このため、新戦車の開発においては本州、四国、九州など全国的な配備運用に適した能力、砲塔・車体一体でのトレーラー輸送など戦略機動性の向上が求められた。結果、試作車両は90式戦車と比べ、全長で約 38cm、全幅で約16cm小型化され、全備重量は約6t軽い約44tとされている。

全国的な道路交通網の整備がなされ、61式戦車が開発された頃に比べ鉄道に頼らずに済むようになったため、陸上自衛隊では74式戦車の開発以降、鉄道輸送は事実上断念している。90式戦車の場合、専用のトランスポーターによる輸送を行えば、道路の許容重量によって走行できるルートが限られてしまう可能性や、長距離を自走させた場合に足回りを傷める可能性があったが、小型の40t級車輌とすることでこれらの問題に対処している。

全国の主要国道の橋梁17,920箇所の橋梁通過率は10式戦車(約44t)が84%、90式戦車(約50t)が65%、海外主力戦車(約 62~65t)は約40%とされる。

74式戦車をトランスポーターで輸送する場合、最大積載量40tの73式特大型セミトレーラで砲塔と車体が一体の状態で輸送できる。一方、90式戦車の場合は、最大積載量50tの特大型運搬車であれば砲塔と車体が一体の状態で輸送できるが、最大積載量40tの73式特大型セミトレーラでは砲塔と車体を分離して別々に輸送する必要がある。

新戦車では74式戦車と同じ輸送インフラを利用できるよう小型軽量化され、試作車両の全備重量は約44t、約4t分の装甲を取り外す事で、73式特大型セミトレーラの最大積載量に収めている。

C4I

諸外国の主力戦車に装備されつつあるC4Iシステム(Command Control Communications Computers and Intelligence〈指揮・統制・通信・コンピュータ・情報〉)を陸上自衛隊の戦闘車両で初めて搭載する。これにより単車内あるいは近くの戦車同士が相互に情報を伝達し、敵や味方に関する情報の共有や指揮統制も可能になるとされる。

また、基幹連隊指揮統制システムに連接させることで司令部や味方部隊との通信能力が向上し、戦車部隊と普通科部隊が一体化した作戦行動が可能となるという。将来的にはOH-1観測ヘリコプターやAH-64D戦闘ヘリコプターからの情報も入手できるようになると言われている。

調達と配備

新戦車の調達初年度に当たる2010年(平成22年)度概算要求では当初、4ヶ年度分の58両(1年当たり14.5両)を一括調達し、2011年(平成23年)度~2014年(平成26年)度に分割して取得する計画だった。

だが、2009 年の政権交代に伴い新たな防衛計画の大綱と次期中期防衛力整備計画の策定が1年間先送りされた為、一括調達は中止され、最終的には13両を124億円で調達することが正式に決定された。なお、2008 年(平成20年)度予算から調達初年度に一括計上されるようになった初度費(製造に係わる初期投資費)であるが、初度費込みの契約ベースでは187億円とされている事から、初度費は約63億円と推定される。

調達初年度の1両当たりの単価は約9.5億円で、2011年(平成23年)度より取得が開始される。現在、1個戦車中隊は14両程度の戦車で編成されるが、初年度からそれに満たない調達数となる。陸上自衛隊によると2009年(平成21年)度末の時点での戦車配備数は約800両だが、中期防衛力整備計画 (2005)では戦車の定数を約600両と定めている。 90式戦車の最終調達数が341両であることから、今後退役が進む74式戦車を全て新戦車に更新する場合、新戦車の必要数は約260両となる。ただ、本来装甲車である筈の機動戦闘車(開発中)が装備化された場合、機動戦闘車が戦車定数に含まれると言われており、それが現実となれば新戦車の調達計画にも影響を与えることになる。

性能諸元

全長 9.42 m
全幅 3.24 m
全高 2.30 m
重量 約44 t (全備重量)
懸架方式 油気圧式 (能動型)
速度 70 km/h
主砲 44口径120mm滑腔砲 (日本製鋼所製)
副武装 12.7mm重機関銃M2 (砲塔上面)
      74式車載7.62mm機関銃 (主砲同軸)
装甲 複合装甲(正面要部)
      増加装甲(砲塔側面)
エンジン 水冷4サイクルV型8気筒ディーゼル
      1200 ps / 2300 rpm
乗員 3 名
開発費:約484億円 単価:約9.5億円(H22年度)

さらに詳しく → 10式戦車(ひとまるしきせんしゃ、Type-10 Tank)



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(2008/12/10)
後藤 一信

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タグ : Type-10 戦車 10式戦車 ひとまるしき Type10 陸上自衛隊 C4I

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